なかなか判断に困る。2年前に刊行された、その時点ではまだ単著を刊行していない作家で、「五年後とか十年後とか、書き手たちがそれぞれSF短篇集なりSF長編なり刊行して知名度が高まったあとでようやく編まれる」ような性格のアンソロジー、未来を先取りしたような一冊。実際2年後に単著が刊行されたとある作家のとある作品を読もうと手に取って、なんだか編者に踊らされてるなあなんて思ったんだけど、実はそれ、読んでました。割と微妙だったんで感想をちゃんと残して無かった。そんな不確かな状態で読んだものだから、どうにも落ち着かない。坂永雄一「無脊椎動物の相続力と創造性について」は既読且つ面白かった作品でしたが、全体的にあんまり合わないかなーと読み進めたら、最後に配置された琴柱遥「夜警」が抜群に良い。
14の作品から個別のテーマを導いて、先行作品へのルートを示したり、巻末には新鋭のSFが読める場を紹介したり、ブックガイドとしての機能が突出していて、それは面白いなあと思う。