戦後から始まる児童向けSF叢書の数々を、表紙画を使って紹介していく内容。日本SF作家クラブ50周年事業だそうで、時折挿入されるコラムに瀬名秀明とか池澤春菜とか……って眉村卓まであってびっくりしました。最晩年だなあ。内容は「なぞの転校生」執筆当時の事情など、貴重な発言。
メインはビジュアルなのだけど、戦前戦中から連綿と繋がっている「冒険」「活劇」「小松崎茂」などの要素が「科学」「少年少女」を通じて「SF」「ジュブナイル」「加藤直之」などに変遷していく様を概括的に見て取ることが出来ます。昭和30年代の本はやはりくどいというかちょっと「洋風」な画も多いのだけれど岩崎書店の「SF世界の名作」(昭和41~42年刊行)にズキュンとハートを貫かれる。自分が見たのは多くが昭和51年刊行の再刊版「SFこども図書館」かもしれないのだけれど、このビジュアルは確かにその昔地域図書館や学校図書室で貪るように読んだ「SFの原点」です。その他にも鶴書房SFベストセラーズとか偕成社SF名作シリーズとか琴線にグイグイ、グイグイくるものが沢山載っている……
それで結構同じ原作が複数の版元から出てるのは翻訳権の問題なんですかね?ハインラインや(これはジュブナイルの方が有名じゃないかと思うが)ベリャーエフとか、日本作家なら豊田有恒とか福島正美とかよく知った名前に混じってエド・マクベインがペンネームで書いてた「月世界探検」ってなにそれすごく興味あるんですけど(´・ω・`)
「ゴジラ」が映画公開前に「科学冒険絵ものがたり ゴジラ」として、雑誌付録で刊行されていたとは知らなかった。こういう周辺情報は映画史だけ当たってもなかなか出てこないんでしょうね。
星新一がショート・ショートではないジュブナイルSFを書いてたというのも、今回得た知見。作品集『黒い光』あとがきには
「時の流れは私たちを、あっというまに未来へと運んでしまいます。私たちはきのうの夢をきょうの現実とし、きょうの現実の上にあすへの夢を育てつづけなければなりません。それによって、人類は限りなく進んでゆくのです」
なんて一節があるんだそうでもうね、泣いちゃうよね。いまこの不景気と戦乱に覆われたつまんない21世紀を生きてる身としたらね……
前述眉村卓も星新一も、ジュブナイルSFの発表の場として「中一時代」「高二コース」などの学習雑誌があった時代で、そういうものが終息を迎えてソノラマ文庫に代表される文庫本のヤングアダルトからライトノベルに移り変わっていくのでしょうね。本書内容は時代的にはソノラマ文庫の創刊あたりまでか。しかしそれ以前の時代でもノベライズ作品も結構あった(アニメよりは実写ドラマとかSF映画とか)というのは温故知新ではある。キャプテン・フューチャーもレンズマンも、アニメより先にジュブナイルで読んでたなそう言えばなー。
ところで、あかね書房少年少女世界SF文学全集の「銀河系防衛軍」を(原作はレンズマンシリーズ「銀河パトロール隊」)としてあるけれど、あれ「三惑星連合軍」じゃなかったかしら?黄金隕石をレンズに変えて、レンズマンのいる設定に翻案してたような気がする。
なんにせよ、SFというのは、結局のところ、
絵だねェ…