昔から名前は知ってるけどちゃんと読んだことって無いよなーと思い。少なくともアンソロジーに収録された1本は読んでるのか。
「雨ふりマージ」、その時はあまり印象に残らなかったし今回も「架空人」の設定にいまいちノリきれないものを感じる。表題作「月を買った御婦人」がいちばんよかったですね。19世紀のメキシコ帝国を舞台にあれメキシコの帝政ってなんだっけなと疑問を抱く間もなく高貴な令嬢が5人の求婚者に提示する無理難題ってこれかぐや姫じゃん!と驚かされるもそこから始まる怒涛のジュール・ヴェルヌ的宇宙開発オルタネイティブヒストリー。その過程で「メキシコ帝国」なる存在が合衆国滅亡後北米大陸を支配する強大な国家であることが明かされて行ったりと、ドライブ感が強い。必ずしも蒸気機関が題材ではないけれど、スチームパンクのパンク的な良さがあって、よかった。
日本SFの臨界点シリーズは「短編集はその作家のポートフォリオである」という、まさにそんなコンセプトで編まれたようなシリーズでもあるので、詳細な解説からは昔から名前を知りながら実際はほとんど接してこなかった新城カズマの全貌を知ることが出来て、それもよい。「サマー/タイム/トラベラー」も、いずれ読んでおこうかな。