- 作者: アントニービーヴァー,Antony Beevor,川上洸
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2004/07
- メディア: 単行本
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「スターリングラード 運命の攻囲戦 1942-1943」*1の著者。文庫化するまで待とうと思ってたけど図書館で。
「スターリングラード―」と基本的には同じ手法で記されてるのだけれど、なにか根本的に違ってる気はする。訳者の問題かと思ったがそうでもないらしい*2
もっとも「スターリングラード―」の場合多くは「日記」からの引用だったことが「ベルリン―」では証言に依ってるようなので元々違っていると言えば違ってはいるのだが、やはり前作に比べると著者の視点がどこか断罪的になっている気がする。前作でもそういう観点はあったんだろうと思うのだが…
いささか感傷的なことを書くとベルリン戦って異質なんだろうと思う。そうならざるを得ない*3何か…か。偏執狂的な個性が直接(ではないのだが)的に対峙し、一方が破壊され他方が爛熟する。うーむ
一九四一年のナチ・ドイツのソ連侵攻は、中央および南東ヨーロッパ全体に共産主義をもたらしたが、それは一九一七年から一九二一年までのあらゆる革命がついになしえなかったことであった。
妙に示唆的なものを感じた一文。歴史は原因と結果と、どこまで反動で作られるんだろうなーとか、ふと。
ベルリン戦の本はいくつもでていてどれもいろいろ、とりわけこの一冊が秀でているということも無いんだろうとは思うけれど一般市民の証言をよく採っているものではある。暴行略奪強姦など、読んでいて決して楽しいものではないが。規律の喪われた戦闘集団というものが如何に危険で暴力的であるか、それは単にソ連軍だけの問題ではないしまたドイツ軍を加えただけの話でもない。思うに何色の旗を掲げ何色の皮膚をしていようが人間の精神的気質に時代の違いもあったものではないのだ。
それでも一箇所、ああこれは引用せねばなるまいよ!
彼らのグループの指導者はみんなに嫌われ、軽蔑されていたヴァルター・ウルブレヒト。ライバルを告発する戦術でよく知られたスターリン主義官僚である。ベーリヤは彼を「自分の父親や母親をも殺しかねない悪党」だと言った。
ベリヤに悪党呼ばわりされるってどんだけだウルブリヒトww
*1:http://d.hatena.ne.jp/abogard/20060525
*2:訳者は地名人名など固有名詞のカタカナ表記は相当気を配ってドイツ語・ロシア語等の発音に近似させているが、日本語表記にはそれほどでもないのか「自走突撃砲」とか書いてしまう。それは「馬に乗馬する」ようなモンだと自分は思う
*3:「ヒトラー 最期の12日間」で芝健介による巻末解説はベルリン戦を研究する視点について述べている