ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

J.G.バラード「楽園への疾走」

文庫版もあり

楽園への疾走 (創元SF文庫)

楽園への疾走 (創元SF文庫)

先日物故したSF作家バラードの作品を、ちゃんと読むのはたぶん初めてだと思う。やたらと世界が滅びる話を書いてるひとだと勝手にイメージしているが、本書もやっぱり世界が滅びる話だった。極めてミニマムな「社会」が崩壊する話なのだけれど。

熟女スキーで核爆発願望がある主人公*1ニール君が、なしくずし的にエキセントリックな環境活動家ドクター・バーバラの主催する運動に巻き込まれ、フランスの核実験予定地であるサン・エスプリ島*2に不法上陸し、そこで始まる自給自足的な生活が拡大し、変質し、やがて――と言うようなお話。アホウドリを救え。念のため言っておきますと環境問題を真剣に考えてる人は読まない方が良いです。本書ではあくまでフィクション上の設定として環境運動を採り上げているだけなので。登場人物はほぼ全員現実離れした思考と行動の持ち主なので、まさかコレを読んで本気で「環境活動家は頭がおかしい」などと現実的に受け止める人も無いとは思うが。受動的エキセントリックっていうのは面白い行動だなーとか思う。世界中から寄贈された絶滅危惧動物を鍋に放り込んでバリバリ食う場面*3とかはヒステリックに楽しい。いやフィクションですよ!空想ですから!!

たぶんこの本は正反対に位置するジェイムズ・ティプトリー・jr*4的なものではないか…と。深く広い溝に隔てられ、向こうがこちらを異質であるとするならば、こちらにとっても向こうは異質なのだ*5。なんて言うと人類の半分にはケーベツされんだろーなー。


それではみなさま、楽園へとゴーです!

*1:なんて設定だ

*2:なんてネーミングだ

*3:なんて展開だ

*4:もしくはアリス・B・シェルドン女史

*5:SFマガジン今月号の追悼特集、著者本人による自作解題ではそんな要素にはひとつも触れてなかったけどいいの!俺はそう思ったんだから!!