ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ロバート・ブロック「血は冷たく流れる」

血は冷たく流れる (異色作家短篇集)

血は冷たく流れる (異色作家短篇集)

異色作家短編集の8。というわけで採り上げられている短編小説群はどれも「異色」であって単純にホラー小説とは言えないものだけれど、相当にショッキングであり、なによりロバート・ブロックなので。

ロバート・ブロックといえばラヴクラフト・サークル一番の若手で、また一番の出世頭だ。なにしろ世間では「サイコ」の原作者として有名で、その他にもヒッチコックがらみで知られていたりまたそんなモロモロの事柄とは無関係に、単に自分自身の筆力だけで十分生きて行けた作家である。


つまり、独立種族だ(笑)

だから、そんなオリジンでインデペンデントなこの短編集を読んでいて「うららかな昼下がりの出来事」という一編――ちなみにこれは謎めいた精神科医が実在する幻想小説を「夢」として売りつけるお話です――に

お分かりのようにわたしは作者の夢に直接インスパイアされた文学しか使用しませんから、範囲もかなり限られておりましてね。今のところ、売れ残っているのは、キャベルの『スマート』やキップリングの『ブラッシュウッド・ボーイ』ですが、ラヴクラフトの作品はちょっとどなたにもおすすめできませんね――あまりにも陰惨ですから」

なんて台詞を見つけると、ちょっと楽しくなるもので。




全部で16編収録されているなかでは「わたしの好みはブロンド」と「ベッツイーは生きている」「フェル先生、あなたは嫌いです」の3つをお気に入りに挙げてみる。どれもラストにひっくり返されるどんでん返しな傑作だけれど、重要なことは全部本文中に既に書いてあって、角度を変えて照明を当てたらまったく違った形に映るような、そんな作品。


HPLに代表されるパルプホラー小説とスティーブン・キングに代表されるモダンホラー小説との橋渡しになるような人なのかなあ、ブロックって。