ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ジョン・ディクスン・カー「グラン・ギニョール」

グラン・ギニョール (Shoeisha・mystery)

グラン・ギニョール (Shoeisha・mystery)

そもそも全然別の書籍、「グラン=ギニョル傑作選」asin:4891768088が面白いと聞いて探したんだけど図書館には無かったんでたまたま目にした似たようなタイトルがディクスン・カーの本邦初訳だとかでそれほどカーマニア(自動車好きに非ず)でなくとも興味はあって読んでみたらこれが「夜歩く」の原型となった中編でした。「夜歩く」は既読で本棚に持ってるんだけど、トリックも犯人もすっかり忘れてたんでまったく問題ない(わら それで結局本書読んだ後に長編版も読みなおしたのでした。

夜歩く (創元推理文庫 118-14)

夜歩く (創元推理文庫 118-14)

事件の概要、密室殺人とその解法は双方ともだいたい同じで、長編版はキャラを増やしたりロマンス要素を加えたり真犯人のキャラクターが掘り下げられたりしています。じゃあ長い方がよいかと言えば単純にそういう訳でもなくて、全10章からなる中編版は事件解決だけに集中する内容だったりエラリー・クイーンに先駆けてページ上で「読者への挑戦」をやってたりとこれはこれで。

しかし中編「グラン・ギニョール」が後の長編「夜歩く」とまったく異なる点が一つあり実にそれが面白いところだった。「夜歩く」でバンコランの推理はごくごく普通に関係者に開陳される「名探偵スタイル」なのだけれど「グラン・ギニョール」でのバンコランは

暗転した室内で関係者一同を手枷足枷猿轡で椅子に拘束した上で、自らの推理をグラン・ギニョールの演劇スタイルで無理やり鑑賞させ、「私の推理が正しかった証拠に犯人は拘束をほどいて逃げ出しましたでしょ?ほらね」と


「時計仕掛けのオレンジ」かよ!!

などとまー、むかしから名探偵ってエキセントリックなんですね。という内容でした。

 先生、それは尋問に名を借りた拷問の一種だと思いまつ ( ・ω・)ノ


他にもショート・ショートや怪奇風味の強い短編など、極初期のカー作品が計4編、併せて自ら編纂予定だった「十大推理小説傑作選」の序文として著された「地上最高のゲーム」が収録され個々の作品にはカー研究家として名高い(のだそうな)ダグラス・G・グリーンによる前説があって大変親切な作り。カーマニア(自動車好きに非ず)必見。