ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

モリナガ・ヨウ「モリナガ・ヨウの土木現場に行ってみた!」

モリナガ・ヨウの土木現場に行ってみた!

モリナガ・ヨウの土木現場に行ってみた!

石ノ森章太郎によるとマンガは萬画だそうなんで、イラストルポルタージュももうこれ全部マンガであります!的くくりで。グルカナイフ。(それはクックリ)

例によってタモリ倶楽部的エッセイ風味の内容です。妹尾河童的…でもあるのかな。新宿駅やダムなどマキシマムな現場から石神井川の整備事業なんてミニマムなところまでの工事現場を取材したもの。元々「土木学会誌」って業界誌に掲載されていた記事がベースになってるんで、読者に知識あるの前提でイラストパートは若干把握しづらい、というより対象がデカくて捉え方が難しいのかなー。北は北海道から南は沖縄までと取材地域が広範囲なのはクライアントが大きいからだろうなぁ。

知らないことばっかりなんで勉強にはなりますね。「おとなの社会科見学」的でもある。工事内容によっては地中に掘り進む際に加圧する現場もあるそうで、そのため作業の出入りには潜水みたいな減圧室が必要だとかまー目からウロコが。百聞は一見に如かずで驚くことがいっぱい、よく消化しきれていない気がする。メガストラクチャー萌えにはぴったり。

圏央道の高尾橋か外郭環状線の工事現場とか、それなりに自分の社会生活に影響を与えるような場所もあっていろいろ考えたりも、まあするのですが。実際現場の人たちがどれだけ環境に配慮して原状回復をはかっているのかなど、外から見てるだけでは解らない事象も多々ありで、でもしかし本当にこれでいいのかなぁと、この2006〜2007年に連載され2010年に発行された書籍に「島根原子力発電所」の工事現場が取材されてるのを見ると、悩むところです。業界誌に連載され学会の先生に監修されてるかからモリナガ氏特有の皮肉めいたウイット、反骨精神があんまり感じられないんだよなー*1しかし例によって興味深いものを見つけるとダダーッと走ってってあとから説明の人が追いかけるとか、高いところ全然ダメとか、そーゆー方のモリナガ節は健在です。


自然環境と人的開発、このふたつはいつも対立項目として捉えられる。開発無しに人の社会は在り得ないけれど環境無しに人の生活は成されない。「人類は地球にやさしく自然保護」ではなくて「やさしくない地球から人類を守るための環境保全」が大事だろうとはむかしから――中学生のころにシローマサムネのアップルシードを読んでからだ(笑)――思ってたけれど、いまになってこの本を読んで僕は思った。







人類は滅びるべきだ。

そうすれば後の世の生命体にずいぶんと謎と秘密と都市伝説めいた様々な土木建築遺跡を残せるであろうよ。

何を造ったって自然には打ち勝てない。プルトニウム放射線量はたったの2万年で半減するのだ。

*1:それでも、原発とセットで取材された六ヶ所村の最終処分場があまりに禁止事項だらけで内容が薄く、書籍には収録しなかった…とかで喉の奥に小骨の刺さったような言い回しが