ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

クラーク・アシュトン・スミス「ヒュペルボレオス極北神怪譚」

ヒュペルボレオス極北神怪譚 (創元推理文庫)

ヒュペルボレオス極北神怪譚 (創元推理文庫)

図書館に「ゾティーク幻妖怪異譚」asin:448854102Xは無くともこっちは置いてあるのであった。しかしどっちもなんてぇ大仰なタイトルだいと、思わなくもない(苦笑)

クトゥルフ神話はその名に反して神話でも何でもなくて…などと言われますが、その中にあってC・A・スミスは神々と人間が共存していた時代を扱って架空の「神話」を語るような作品をいくつも書きました。本書は遥か太古の地球を舞台にした一種の異世界ファンタジー短篇集で、構成は大別して「ヒュペルボレオス」「アトランティス」「幻夢郷奇譚」の三部に分かれます。作風としてはラヴクラフトよりむしろハワードに影響されたものがあって…とは大瀧啓祐先生による巻末解説で、これまでクトゥルフ作品的には「ハイパーボリア」と言い慣わされて来た「ヒュペルボレオス」が実は古代ギリシア文化に由来をもつ世界観で「アトランティス」と並置され得るものなのだと漸くに知見を得る。なんでも勉強だな…

個々の作品は既読のものあり未読のものありと様々だけれど、ケイオシアムのRPG「クトゥルフの呼び声」では割とメジャーな存在であった「ツァトゥグァの落とし子」が(おそらく初めて)登場する「サタムプラ・ゼイロスの話」が、古代世界の泥棒が盗みに入った先の神殿で守護者に返り討ちに合うという宇宙的恐怖でもなんでもないとゆーのが興味深かった。やはりゲームはゲームで、ゲーム的使いやすさのあるモンスターを重用するのだろうな。「ニャルラトテップの忌まわしき狩人」もたしか小説作品ではほとんど言及がないのだったか…

そしてスミスといえばクトゥルフ神話にコメディ持ち込んだ人として有名である。これまであらすじしか知らなかった「七つの呪い」はあらすじだけでもコメディだろうと予想は付いてたが、まさかwwこんなオチかwwwヒドすwwww


唯一中国を舞台とした「柳のある山水画」も日本人好みな、いかにもなお話なんだけれど、シー・リャンと弟のポ・ルンってやっぱテキトーに付けたネーミングなのかなぁと、そこんところはちと気になる。