- 作者: ジョー・ウォルトン,茂木健
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2010/07/27
- メディア: 文庫
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「英雄たちの朝」*1に続く英国歴史改編三部作の二。原題の「HA' PENNY」はハーフペニーの俗語でシェークスピアの台詞に使われたり、いわゆる「天井桟敷」の席料だったり。このシリーズ三作とも小銭をタイトルにしていくのかな?英国小銭シリーズじゃカッコ悪いけどな…
前作より2ヶ月後を舞台にし、前作と同様2人の語り部を交互に廻していくスタイル。カーマイケル警部補の追う女優爆殺事件と貴族の出自*2である舞台女優ヴァイオラが巻き込まれるヒトラー暗殺の謀議はやがてひとつに結びつき…謎解きよりもサスペンスに重視を置いて、はたして「ハムレット」観劇中のヒトラーは爆殺されるのか否か、前作よりもスピーディなタッチで読ませます。事件の進捗が市井の人々の「密告」によるのは本格ミステリーとしては食い足りないかも知れないけれど、だんだんと右傾化・全体主義化を強める架空のイギリス社会の「怖さ」を描くにはこれでいいのだと思う。
いっそう悪くなっていくこの世界の行く末をどうまとめるのか、第三作「バッキンガムの光芒」が気になります。
大して意味もなく同性愛者のキャラが出てくるのはもう気にならないけれど、政治権力の中枢近くにいる人間が稚拙な犯罪を犯すのは気になった。犯罪を犯す事ではなくそれが稚拙なこと、果たしてそんな愚かな人間が政治権力の中枢にいるものなのだろうか?
…ま、いますね(´・ω・`)