- 作者: 千早正隆
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2008/12
- メディア: 単行本
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日本海軍はなぜ太平洋戦争に敗れたか、を包括的に記した内容。これまでいくつか読んできて、大体こういうことだったんだろうなあと、漠然と感じていたことを改めて確認したような気持ちである。一冊にまとまってるんで最初からこれ読んでりゃ良かったのかといえば、多分そういうことではあるまいね。著者のひとは「海軍反省会」には出席していたのかな?大井篤と並んで戦後日本で旧海軍軍人の主導的な立場にあった人だと、恥ずかしながら読んでるときは全然知らなかった。読了直後に全く関係ないところで偶然知った…
ひとつひとつ挙げていけばきりがない、日本海軍の戦備戦略は問題だらけでそれらは決して偶々そうなったわけではなく、歴史的あるいは民族的な背景の元に醸成されてきたモノの、いわば総決算であったのでしょう。「ではどうすれば良かったか」なんてことはまるで書かれてはおらず、なるべくしてなったということだな。大元を辿れば明治時代に仮想敵国を陸軍はロシア、海軍はアメリカとそれぞれ別個に、しかしどちらも共通して大陸国を対抗すべきものと決定した時点で、敗戦は必然的な結果だったのかも知れません。司馬遼太郎が言うような「明治大正は良くて昭和初期の二十年だけが異常」だとする史観は、虫が良すぎると思わざるを得ない。
アッツ島陥落(というのは初めて「玉砕」なる言葉が社会に踊った時でもあるのですが)に際してアメリカ海軍長官ノックスによる、
「日本は近代戦を理解しないか、あるいはまた近代戦に参加する資格がないか、いずれかである」
これが全てってことじゃないかなあ。例え艦船や航空機に諸外国と肩を並べる物、優越する物があったとしても、基盤となる軍隊や社会、国家そのものが近代的な暴力装置としての資質を備えていなければ近代戦は遂行し得なかったのでしょう。
翻って今の日本は、僕らの社会は、果たして理解でき、参加する資格を持っているのでしょうか?現代の戦争と、そして現代の平和に。
「艦これ」で日本海軍に興味を持って実際の歴史を知りたいという方には(決して楽しい内容ではありませんが)向いたものかも知れません。こういう物を読んでいると「軍艦を擬人化する」なんてことより「ミッドウェー海戦で大逆転」とか「私ならこうする」のほうがよっぽど冒涜で侮辱だなどと思ったりだ。