「ダンセイニの幻想法螺話」とサブタイトルにあるように、まあ法螺話です。現代(執筆当時の「現代」)ロンドンのビリヤードクラブ――とはいえビリヤード台がある訳でもない――で常連メンバーのジョーキンズが語る、出自の怪しい体験談の数々。全体的にユーモラスな雰囲気を持たせようとしているのはよくわかる。それは概ねcoco氏による表紙画の力が大きいのだけれど、amazonの書影は書函込みなんでその点は判りづらい。
あとがきに書かれているように、ダンセイニの位置づけを高尚なところからもっと手の届きやすい場所に持って行きたいというのが編纂方針のようなのですが、それにしてもそのあとがき自体や時折挿入されるコラムには「崇拝」がほの見えるような…?
実際、イラスト抜きで文章に向かえば「ホラ話」と軽くいなせて済ませるよりも、もっとウエットな印象を受ける作品も多くて割と判断に困るところもあり。「リルズウッド森の開発」なんかはなんでやねん!と関西風にツッコミ入れてしまうようなオチだったり、「薄暗い部屋」でじわじわと醸成されるハズの恐怖感は、なぜだかドタバタなエンドに思えてしまうこともありで軽いタッチのユーモアも多いんだけどね。
不思議な一冊ではあります。