ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

「日本の重戦車」

日本の重戦車 150トン戦車に至る巨龍たちの足跡 (メディアパルムック)

日本の重戦車 150トン戦車に至る巨龍たちの足跡 (メディアパルムック)

カマドの戦車本読むのもひさしぶり。これまで不確かな情報に基づいた話に無駄に尾鰭がついて拡散されてきたきらいがある旧日本陸軍の、いわゆる「100トン戦車」の実相を伝える実に貴重な一冊です。先にファインモールドからプラモデルが出ていて、そこにも解説はあるでしょうけれど、ひとつのまとまった書籍になればあとあとまでも残るものでね。

1/72 日本陸軍 150t超重戦車 オイ プラモデル FM44

1/72 日本陸軍 150t超重戦車 オイ プラモデル FM44

本書の中核となるのは三菱重工東京機器製作所丸子工場での製造作業を記録した「ミト車日誌」全ページで、これまで100トン戦車「二形式作られた」説が流れていたのは、この車輌の軍側の呼称が「オイ車」、三菱側の呼称が「ミト車」とそれぞれ別々になっていてで、どうもその辺の話がいろいろ変質していったのだなーというわけです。この先そういう誤解が広まることもないでしょう。

…しかし実相を知ってしまうと極秘新兵器超重戦車どころか素人が思いつきで設計したハリボテに過ぎないんじゃないかとか赤裸々過ぎるのが困りものである。軍側の資料はあまりというか全然ないので誰が何を考えてオイ車を作ったのか、本書でもやはり岩畔豪雄大佐あたりが黒幕だろうと推測されてはいるが…

結局軟鉄製の試作車がシャーシーだけ出来て、最初の走行試験で自壊しそのままスクラップというまその、なんでしょうね。多砲塔戦車には夢、ロマンも必要ですけどね。

巻末にはアーマーモデリング誌に掲載された北川誠二氏の「日本の重戦車とその改造自走砲」が再掲されていて、こちらも貴重な内容です。しかし絵画は日本戦車記事を書籍化する気は全然ないのね。上○信センセのポンチ絵本はよーだすのにな。