ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

アラン・ムーアヘッド「砂漠の戦争」

第二次世界大戦のアフリカの戦いの開始から終結までをイギリス軍からの視点で包括的に描いた内容で、10代の頃に1度読んだものを久しぶりに再読。

Amazonで書影が出てるのは最近の復刻本で巡行戦車Mk.IVかな、それがカバーイラストなのだけれど、自分が読んだのは今回も10代の頃も本来北アフリカ戦線には配備されなかった(それどころか開発さえされていなかった)重駆逐戦車エレファントが描いてある。アフリカだから象なんだろうかまあいいか。内容としてはさすがに古いものであるけれど、従軍記者による見聞録というか旅行記?みたいな温度で記述されている感もあってなんだろう、実感はあるけれどどこか抑えた論調も見て取れる…ような。

そもそもこれを読み直そうと思ったのは例の「イタリア軍砂漠でパスタ伝説」 の大元ってこの本だよなという記憶があって*1、実際どういう記述だったのか確認したいなーと思っていたのです。なので当該箇所を引用してみる。

 

スパゲッティは青い紙の包装で、戦前のイタリアの食料品店にも負けないぐらい種類も豊富なマカロニその他の小麦粉製品の大袋と一緒に貯蔵されている*2

 

イタリア製のトマト・ピューレで味をつけたスパゲッティ入りのシチュー、イタリア製の罐詰の牛肉、イタリア製のパルメザン・チーズを、イタリア製のミネラル・ウォーターで流し込んだのだ*3

 

彼らは水の補給にも天才的な能力を発揮していた。パルディアからのパイプ・ラインは完成寸前だった。間もなく、砂漠に大々的な野菜園まで作りあげていただろう。砂に穴を掘ったベドウィン水飲み場という記憶のあるブク・ブクには、今や蒸気機関車の給水に使われるような背の高いポンプがずらっと並び、大きな地下の貯水槽が二つもできていた*4

 

スパゲッティと、水の補給に関する箇所はこれぐらいか。「スパゲッティ入りのシチュー」というのは妙にうまそうだなーと、初読当時も思ったものです。なのでまあ、本書の記述を信じる限りにおいては、「イタリア軍は砂漠にロングパスタを持ち込まなかった」と断言は出来ないような気もする。もっとも、原書でどうなっているかをみないとホントのところはわからないんでしょうけれどまあ、備忘録的に。

 

六月二六日、イギリス軍の迎撃態勢がととのったとはまだとてもいえないうちに、マトルー周辺の崖の上で、主としてニュージーランド軍師団と、ドイツ軍第九〇軽歩兵師団および枢軸軍戦車隊の間に、流動的で血なまぐさい戦いが展開された。信じられないほどの勇気の持ち主であるフライバーグは、銃剣突撃こそ歩兵の真髄という信条のもとに、麾下のニュージーランド兵を訓練してきていた。これまで、クレタ島でも砂漠でも、鬨の声をあげ、銃剣をかざして襲いかかってくるマオリ族の兵士に、進んで立ち向かおうという部隊は、枢軸側には一つもなかった 。ドイツ軍も、その例外ではなかった*5

 

これはスパゲッティとは関係なく(笑)、1942年6月のロンメルによるトブルク攻略あたりからの引用なのだけれど、ここに限らず本書ではニュージーランド軍兵士の精悍さについて、折に触れて賛辞が送られています。現在のニュージーランド軍が相当小規模な組織(陸軍なんて2個大隊とちょっとしかない)なのとは隔世の感だなーと。LRDGの要員も結構な割合でニュージーランド兵だったんだよな。

*1:実際にはボードSLG「アフリカン・ギャンビット」の補給ルールが火元なんだろうけれど

*2:42

*3:56

*4:52-53

*5:268