ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

フィリップ・カー「死者は語らずとも」

新グンターシリーズ3作目。シリーズ全体では5作あるそうですが、現在のところ邦訳は本書で止まっているようです。 今後どうなるかはわからないけれど、さすがに5年開いたら普通には続かないだろうなって(´・ω・`)

 

今回は全体が2部構成となっていて、前半約三分の二は1934年のベルリン、刑事警察を辞したグンターがアドロン・ホテルの警備員(いわゆる「ホテルの探偵」というやつですね)をやっている時期が舞台。すでにナチスは政権の座にあり日々権力を強めていく時代にあってなお反骨精神豊かな我らがグンターですが、例によって簡単に拉致されたり暴行されたり屈服したりする。屈服からの反撃というのは冒険小説によくある構図だけれど、いつも負けっぱなしなところもいつものグンターではある。2つの死体をきっかけに2年後に迫ったベルリン・オリンピック開催に関する犯罪を糾明するというのが前半部のテーマで、そこにはユダヤ人弾圧やらいろいろ絡むわけですが、例によって美女と絡んだりします(肉体的な意味で)黒幕を突き留め陰謀を暴かんとするや拉致されて暴行されてそこで屈服しなけりゃヒーローなんですが、屈服しちゃうんだなこれが。グンター、ああグンター…

 

第2部は前作でアルゼンチンを命からがら逃げだして4年後、1954年のキューバハバナが舞台となります。バチスタ政権が強権を敷いてカストロ率いる反乱軍が蠢動する革命前夜の時代ってなんでそんなところばかり行くのかグンター。前作ラストではアルゼンチンに残したヒロインの身を強く案じて(そして悲観して)終わってたのですが、4年後の今はそんなことすっかり忘れて愛人囲って自堕落に生活してましたグンターああグンターって感じだな(´・ω・`)

 

そこで第一部の関係者たちと劇的な再会を果たし、いろいろあって漸くにかつて屈服した相手に反撃を遂げる。という展開…ではあるのだけれど、結局キューバ政府軍情報部の手先というか走狗に成り下がって終わるというなんかこの、ここで終わらせちゃダメだろうっていいのかなこれ。

 

続巻ではおそらく革命に打倒されこの地を去るような展開になることは予想に難くない。それが面白いかどうかは全然わからない…