ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ユッシ・エーズラ・オールスン「特捜部Q―吊るされた少女―」

特捜部Q―吊された少女― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

特捜部Q―吊された少女― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

特捜部Qシリーズ第6巻、これまでにないボリュームで読み応えも抜群。迷宮入りしたままのひき逃げ事件を殺人事件と信じて長年追い続けてきた一人の警官が、特捜部Qへの捜査依頼と共に拳銃自殺する…という、ショッキングな割りにはそこそこベタな幕開けで始まる今回の事件。
例によってフラッシュバックの手法を用いて過去と現在が交錯する展開なので、早くから読者にとっては過去でスポットが当てられる新興宗教団体があやしいと思わせられる流れです。悲しいかな新興宗教と犯罪というのはフィクション世界でも現実世界でも結びつきやすいところがあって、ありがちなストーリーを簡単に組み立てることができる。実際その団体と指導者は事件の核心に位置するのだけれど、流石の筆致で真相はもっと別のところにあったのだった…!

安定して面白い、広くお勧めできる内容です。もっと評価されて良いと思うのだけれどどうだろう?

キャラクターの魅力は今更言うまでもないのですが、今回話の途中で、特にストーリー上で重要な位置を占めるわけではないのだけれど、元アフガニスタン派遣兵士とその家族による、北欧神話を崇拝する宗教コミューンなるグループが出てきて驚かされる。これまでもこのシリーズは現代のヨーロッパのちょっとした断面が垣間見える良さがあったのだけれど、はたして今回のこれは現実に存在するのだろうか?

タリバンのような強力な教義にしたがっている人たちに囲まれていると、こっちだって確固たる信念がないとやっていけないからな

21世紀というのも、意外に古臭い時代になっていくのかも知れん。