ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

オーガスト・ダーレス「ジョージおじさん」

オーガスト・ダーレス単独のホラー短編集というのは国書刊行会アーカムハウス叢書で出してた「寂しい場所」以来のものになるらしい。そちらは未読なのだけれど、表題作はアンソロジーで読んでいます。本書はウィアード・テールズ誌に掲載された17本の短編をまとめたもの。初出は1944年から40年代後半を中心に、1962年までの期間になります。

ダーレスが「クトゥルフ神話の作家」として本邦に紹介されたことは、果たして適切だったのかなあと思う。なるほどそっちの業績は大きいけれど、日本のクトゥルフ界隈では批判も結構ありました(自分はそれが妥当なものだとは全然思わない。特にRPGをやってたあたりでダーレス批判してたひとたちは、ラヴクラフト作品みたいなプレイが出来てたんだろうか?)。ソーラー・ポンズもそうだけれど、この人の作家としての本質はノスタルジーにあるんだろうなと、幾度となく思うところで。

思うに、掲載された時期ですら既に怪奇小説としては古かったんじゃないかなあと思わせるゴースト・ストーリー群。しかしそこで描かれている怪異は「因果応報」「勧善懲悪」のようなスタイルで、どこか人を安心させます。幼子を邪悪な人間から守る幽霊、幼子を幽玄へと導く幽霊、子供が守られる話は結構多いな。そのなかで、ひとりのセールスマンが毎年一度通っていた村に、たまたま時季外れのタイミングで訪れてしまったことからその村に隠された因習を垣間見てしまう「ロスト・ヴァレー行き夜行列車」の、生贄に捧げられる赤子とその後の両親の寂しい姿は、恐怖よりももの悲しさをこそ感じさせる。

やあ、なんかいいねえ、これはね。

……しかしアッツ島の戦いで米軍は空挺降下なんかやってないんだが、それはいいのか「死者の靴」は(´・ω・`)

 

<追記>

これを書いたもんかどうかちょっと悩んだんだけど、作品の端々に描写される「黒人」像は、さすがにいま見ると古いし、差別的だと感じます。悪意は感じない、感じないが故に差別とは悪意なく表出されるものなんだろうなと、それを見て取れるのも貴重かな。「当時の時代背景に基づく」といえばそれまでなんだけど、この先のアメリカってどうなっちゃうの(´・ω・`)