ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

新 星緒「困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。」

いわゆる悪役令嬢もの、異世界と言っても乙女ゲーム異世界に転生するという、流行りのスタイルです。著者の新さん(僭越にもry)はさなコンをきっかけにSNSで相互させていただいている方で、これまで小説の商業コミカライズがいくつかあるけれど、小説がそのまま書籍化されるのはお初で、おめでとうございます*1

流行りなんだなーと驚いたのは、ゲーム内異世界の一人格に転生するという、それはどういう理路や仕組みで行われるのかという行為が、

流行りに乗って異世界転生したらしい。

のわずかひと言で片付けられていたことで、これは割と衝撃を受け、むしろ大分感服しました。ジャンル・プロパーな作品で作者と読者の間に相互協定が結ばれているような界隈では、むしろこれでもいいんだなあ……。

本書に限らず異世界が元々「ゲームである」というのは、舞台設定や小道具の配置を恣意的にやることができて、書き易さというのはあるように思います。書くべきもの、読まれたいものが明確に存在するので、それを一本通しておけば、万事問題なしでしょう。

それはなにか?えっと、一度だけ、小声でこっそり書きますからね。

甘い恋愛

です!!

バルコニーから転落し損なって壁にへばりついていた令嬢と二重三重に秘密を抱える大公令息の、これは甘々なラヴストーリーなのですね。だれかMAXCOFFEEを持て。本来石もて追われるような立場であったはずのヒロイン、アニエスが何故に7人のジェントルメン・アンド・レディーから熱烈に求婚されるような羽目に陥ったのか、そういう謎解き要素と、飾り物の令息であったリュシアンの立場を回復し政治的アクションを起こすという宮廷謀略的な要素もありますが、まあやっぱりメインストリートを勢いよくかっ飛ばしていくのはアニエスとリュシアンの恋愛爆走エンジンなわけですね。V8を讃えよ!(デスロードだそれは)

クライマックスで颯爽とリュシアンの窓辺に現れるアニエスはやはり格好良く、且つて仲間内で、TRPGクトゥルフの呼び声」で探索者にもっとも必要とされる技能は何か?という議論が起きた時に、圧倒的多数で「登はん(クライムウォール)だ」となったことを思い出しました。なんだその謎エピソードは。

基本どの登場人物も幸せな結末を迎えるのですが、ひとりだけそうはならんキャラもいますが、それもスパイスというものでしょう。いいじゃないか、昭和の頃の「ハウス名作劇場」だったらレギュラーキャラの中に1人は死ぬヤツがいたものだけど[要出典]、そこまでではない。

巻末にエピローグ的に掲載されてる番外編は本当に甘過ぎるので、耐性の無い人がうっかり飲み込むと甘酔いします。用法・用量は十分守って読書しましょー。

*1:訂正。電子書籍がすでにあったそうです。紙の本になるのは初めてとのこと