前作を読んだときには心底長生きしてほしいと思ったジーン・ウルフですが。ご存知の通りシリーズ第2弾のこちらが遺作絶筆となりました。残念なことです。前作の感想はこちらに。
作家の複製体(リクローン)が図書館の書架に収められている世界で、なぜか借り出される先で事件解決を依頼されるミステリー作家(の複製体)E・A・スミスの推理行。今回は人探しなんだけど、探してる人間はすぐに見つかるわ、その人物の秘密もすぐに明かされるわでまだまだ執筆途上の状態だったんだなあと思わされます。謎めいた伏線が謎でもなんでもなく回収されたり、意味ありげに登場してくるキャラがあんまり意味なくふるまったり。また推敲も完全ではなく前後で矛盾する記述が散見され、それらには訳注がフォローを入れていく感じ。例によって唐突に異次元世界?に続く扉が出てきたりと割と一筋縄ではいかなそうな話が、やはり途中でばっさり終わってしまいます。完成していない分、最後まで書き続けていたんだなあと思わされる。この辺り、「巨匠久々の新作」が、こじんまりと纏まっていて面白くもなんともなく、死期が近いんで没原稿で小商いしようと出された本みたいなおとはまあ、違いますわな。本文末のあたりでは死んだはずの人物が唐突に再登場して「いや死んだのは弟の方で」などと言いつつ数ページ後にはその死んだ当人が普通に出てくるなど、完成原稿ではあり得ないような混乱も生じているのですが、孫パタリもまあ、味でしょう。しかしそういう内容を「超絶技巧文学のジグソーパズル」などと巻末解説で称えるのはうーむ、それはどうなんだろうなあ。
しかし複製体のアールさんが同じく貸し出された複製体の女性作家オードリーと、アッという間に肉体関係を結びおせっせに生じ続けるのは、お盛んでございますな(///)