ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

米澤穂信「栞と嘘の季節」

「本と鍵の季節」に続く高校生図書委員堀川次郎と相方の松倉詩門のシリーズ、第2巻。前作の感想はこちらに。

abogard.hatenadiary.jp

相変わらずうまい。唸る。ぐぬぬ。文章が読みやすい作家というのは星の数ほどいるもので、読みやすい文章で平然と嘘を吐くミステリー作家というのも浜の真砂ほどいることでしょう。でも読みやすい文章で平然と嘘を吐きつつ、はっきりと綻びを提示して「ここが推理のポイントだぞ」と見せつけ、そのうえで早々簡単には謎を解かせない作家というのはなかなかいないものです。いまさら言うのもなんですが巧いものですね。ぐぬぬ

前巻が連作短編集だったのに対して今回は長編です。前巻ではギリギリ最後まで傍観者の立場にいた二人が、しかし今回はいやおうなく謎の渦中に放り込まれて真相解明に従事することになる。しかしてそこで表面化するのは事件の謎ばかりではなく「自分の隣にいる人間を信用できるのか」という疑念で、まったりした男子高校生の日常の中になにかヒリつく焦燥感がぐいぐいと加速していくそんな感じ。そして今回は前巻に無い要素として

 

女の子が

 

大変重要な位置を占めます(前巻でもあるにはあったが重要度は薄かった)。米澤作品でガールといえば事件よりもよほど謎な存在で、今回のメインヒロイン瀬野さんは系譜で言えばさよなら妖精シリーズの大刀洗万智に近いか。事件の中心に居ることでは僕と松倉よりもよほど切羽詰まっていて、そして最後の最後で彼女が抱えることになる深層(真相)には、2人は近づけないのだなあ……

面白いです。前巻読んでればより面白いんでしょうが、ここから始めて僕と松倉詩門の間に何があったのか、遡ってみるような読み方でも良いのでしょうね。

やっぱね、男の子同士のくだらないやりとりが楽しいのよ。こういうのを巧く書ける筆には唸るのよ。

 

ぐぬぬ