ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

クリストファー・プリースト「双生児」

双生児 (プラチナ・ファンタジイ)

双生児 (プラチナ・ファンタジイ)

恥ずかしながら一読しただけでは話の意味が判らなかった。大森望の解説読んではじめていろいろ驚かされる。やー、これがなかったら「○オチかよ!」と叫んで本をブン投げていたに違いない。*1

パラレルワールドSFのふりをした、別の何かで、双子の兄弟の手記(≒語り≒騙り)を通じて分裂した双つの世界が交錯するような、意識が工作するような、そんな話かな。書影には映らないけど裏表紙が秀逸な装丁で、表裏一体な構造をよく示してます。例えば一本しかセーブデータの無いゲームを二人の人間が相互に書き換えあって、どちらも相手に気づいてないような構造…でもないか。クリストファー・プリーストは「奇術師」*2を以前読んで、そのときも化かされたような気分になったんだけど、改変世界を記述する際に実在の人物事件などをかなりマニアックなところへ踏み込んだりするので、そもそもそれが実在の人物だって気がつかなかったりする。

たとえばガイ・ギブスンとレナード・チェシャーは、その後、ドイツの貯水ダムを破壊して“ダムバスターズ”の異名をとる英空軍第617爆撃中隊を指揮して名を馳せるはずだが、歴史A*3では617中隊結成以前に戦争が終結するため、違う人生を歩んでいる

…ダムバスターズのリーダーなんて知らんがな(´・ω・`) 例えばイギリスで「野中五郎少佐」がどれほど知られてるのかなーとか、そんなところか。

双子のうち良心的兵役拒否者ジャックの属する世界、英独がバトル・オブ・ブリテンの段階で講和し第二次世界大戦が平和裏に終了した世界のほうがより悲惨な「現在」に繋がるのは良かった。常道といえば常道ではあるのだが。

そうそう、英国人って世界一ルドルフ・ヘスを愛しているよな。

*1:図書館の本を乱暴に扱うのはやめましょう

*2:asin:4150203571

*3:本編中のパラレル世界に対して巻末解説で付けられた仮称