ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

朝松健「弧の増殖」

弧の増殖 夜刀浦鬼譚

弧の増殖 夜刀浦鬼譚

千葉県に在する架空の都市、夜刀浦(やとうら)市を設定し、そこで巻き起こる怪異を描いたベテラン久しぶりのクトゥルフ・ジャパネスク!ということで若干自分の中でハードル上げ過ぎてたかも知れない(´・ω・`)「邪神帝国」asin:4150306230みたいな連作短編を期待して読んだらむしろ「崑央の女王」asin:4041920019的なノンストップ長編小説だったという空振り感はこっちの勘違いが悪いんだけれど。

読者のこちら側に球種の読み違いがあったとはいえ、作者の側では狙って直球を投げたストレートなB級ホラー作品である。そのように受け止め、そのように楽しむべし。「都市伝説」や「ケータイサイト」「噂」など、イマドキの和製ホラー小説よりかなと思われるのでクトゥルフとか知りません向きにも。むしろそっちに。

「肝盗村」とか「ヨス=トラゴン」とか、著者の先行作品で聞かれた名前が散見するのはうれしいところで、出来得ればこの夜刀浦市の設定も、語り継がれてほしいものだな…とか思う。むしろシェアードワールド的にいろんな書き手が思う存分弄り抜いて「夜刀浦市は何度怪異に襲われれば気が済むのか」「毎度人死にが大量な夜刀浦市の総人口って一体」「おれは夜刀浦住人だがもう軽く3回は死んでる」ぐらいになればホンモノかなーと。

怪異・怪奇現象・異音・怪物・呪詛など、およそその手の物に実感たっぷり込められているのは流石ベテランの書き手だなと思わされる一方で、メインキャラクターの一人である女子高生の人物描写が浅薄に感じられるのはしょうがないのかな。おじさんだからなー(´・ω・`)