ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

フィリップ・K・ディック「最後から二番目の真実」

最後から二番目の真実 (創元SF文庫)

最後から二番目の真実 (創元SF文庫)

ディックの長編って実はそんなには読んでない。「アンドロイド―」と「高い城の男」のふたつは好きなんだけれどそのむかしに「ザップ・ガン」とあー「ヴァリス」だったかな、その辺読んでチンプンカンプン(死語)だったからか、長いのはそんなに手を出してないの。今回これを手に取ってみたのはタイトルが良かったからで、ディックの作品ってどれもタイトルは詩情があっていいよね。

中身はまー、なんだろうなあ。破滅的な東西陣営間での核戦争を逃れて地下生活とノルマ労働を強要されている市民と、遠の昔に戦争が終結して平穏な地上を支配している上級官僚とのギャップ、世界設定は面白いんだけどいかんせんそれを語るストーリーはあんまり面白くないんだな。あとがきでも述べられているけれどストーリーの根幹となるその大仕掛けは50ページちょいで明らかにされ、視点人物が地下生活市民のニコラス以外に管理局のアダムズや私立探偵のスコットなど複数に渡って話を転がしていくのだけれど、転がしていった結果どこにも辿り着きません……

凡百の人間ならもっと簡単に凡百な話を作るのだろうけれど、たぶんその方が普通に面白いぞこれ。20年うーん30年ぐらい前なら?ハリウッドでシンプルなアクション映画になったんじゃないかなあ。第二次大戦の推移とその後の冷戦構造を基軸にしているので、いま同時代的にやるのは難しいかもだ。

例によってディック特有の安っぽいガジェットに満ちたディストピア未来社会は、それなりに堪能できます。先に書いたように「最後から二番目の真実」っていいタイトルなんだけど、では「最後の真実」ってなんだったの?と聞かれると ┐(´ー`)┌ さあねえと肩をすくめざるを得ない(w