読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

土屋健「古第三紀・新第三紀・第四紀の生物」上下巻

ノンフィクション・古生物学

 

 

 

 技術評論社「古生物ミステリー」シリーズ第9巻、10巻。新生代の生物とその進化についての解説。黒い装丁のこのシリーズ、前々から図書館で気にはなっていたのだけれど、巻数も多いし先カンブリア紀(なんて言い方自体、自分の知識が古いことの証だね)から始めるのは話が長いしなァ、などと思って手を出しかねてました。が、しかし先日恐鳥類についての記述があるぞとSAKさんにご教示いただき、ピンポイントで読んでもいいかなと手に取ってみた。なんだか銀英伝の10巻だけ読むひとみたいなキブン(笑)ちなみにSAKさんの「logical cypher scape」では古生物ミステリー全巻の内容が詳しく解説されているので、詳しく知りたい方はぜひそちらをご覧ください。自分はこのあと与太話しか書きません(警告)

d.hatena.ne.jp

さて、恐鳥類だ。何故急にこれに興味を持ったかというと、最近「恐竜は鳥に進化しますた」ってことはもうテレビのクイズ番組ですら取り上げるほど広まっていて、世の恐竜像はずいぶん変化しました。でもその割に世の鳥類像はあまり変わってないなあという気がして(気がするだけだ)、鳥類の進化と適応はいまどのように捉えられているのだろうかと、そういう疑問からです。

いわゆるディアトリマに代表される恐鳥類って以前は「恐竜が滅んだあと一時的に地上に進出し、哺乳類との生存競争に敗れた鳥類」みたいな認識をしていたけれど、恐竜がすなわち鳥であるのなら「恐竜から進化した後再び地上に戻り、哺乳類との生存競争に敗れた鳥類」ってことなのか、あるいは全然空になど羽ばたかず、地上に在り続けて恐竜から正常(?)に進化していったのかさあどっちだ。ぐらいの認識が本書を読む前のスタンス。

で、読んでみた。なるほど「ディアトリマ」ってあまり言わないのね最近は。ディアトリマあらため「ガストルニス」。ガストルニスさん、覚えましたし…(ちなみに私はトリ頭です。なんでも忘れます)。そのガストルニスが「『じつは植物食性ではないか』と指摘されている」という記述には心底驚かされましたよええ。あんなデカい鳥が地上をのそのそ歩いて(いや走ったかもしれないが)植物食ってなんだよ生存競争どころか自走するケンタッキー・フライド・チキンばりにエサ動物じゃねーかよそりゃ絶滅するよ…

幸い下巻に記述があった南アメリカ大陸の恐鳥類は未だ肉食性だと看做されているようで、なんというかな安心だな。やっぱりほら、「恐ろしき鳥類」でいてくれた方がその、いろいろと昂ぶる(笑)

また本書ではペンギン類について多くページが割かれていて、中生代の大量絶滅直後、新生代の初めにはもう水中生活に適応した「最古のペンギン」が生まれているとの由。これも非常に驚かされる。驚かされることだけれど、例えば鳥類の生態を「流体の中で三次元的に機動するライフスタイル」だと考えれば、地上を歩くより水中を泳いでいるほうが、空を飛ぶことには近いのかも知れないね。鳥類の大きな特徴である「酸素の薄い領域でも活発な活動ができる」点でも、空中と水中は似たようなものだと(かなり、乱暴に)言えるのかも知れない。

我々は「鳥は飛ぶもの」だという前提でダチョウやペンギンを「飛べない鳥」といってしまうけれど、本当は「飛ばない鳥」なのだろうな。現生はたまたま鳥類のうちで「飛べる鳥」が大きく繫栄した結果なのであって。

だってほら、羽毛恐竜が広く生息していたからと言って、なんでもかんでも空飛んでた訳じゃないしね。ティラノサウルスに羽が生えてる復元で、誰が空を飛ばすものか。羽毛というのも空を飛ぶためだけに生まれた器官でもないのだろうなー。

などと約体もつかないことを考えた。良い読書だった。

 

本書全体に関して、メインとなるのはやっぱり哺乳類の記述です。子供の頃このあたりの生き物は「たかしよいち」先生の児童向け書籍でずいぶん読んだものでした。デスモスチルスののり巻みたいな臼歯とか、タールピットから発見される様々な生物の化石とか、懐かしく思い出すことが多くて高士与市先生には感謝するところ大ですね…。収録されている化石、骨格標本の写真も面白いものが多く、特に下巻134ページのメガテリウムの写真がまあ楽しくて、全巻こういうノリなのかな?やはり読まねばなるまいね。

そしてこんど科博に行ったときは、新生代の生物化石をもっとちゃんと見直そうと考えるのであった。