ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ジェフ・ヴァンダミア「ワンダーブック」

 

ワンダーブック 図解 奇想小説創作全書

ワンダーブック 図解 奇想小説創作全書

 

 変な本だなあこれ(´・ω・`) エッセイというか小説技法の指南書なんだけれど、副題に「図解」とあるようにビジュアル重視でイラストが多い。そして「奇想」とあるようにかなり不思議な雰囲気のイラストがほとんどです。このあたりはamazonの製品ページだけでなく版元の紹介も見るといいかも知れません。

普通この手の本は文章と、精々グラフかベクトル図版程度で解説を進めていくものですが、本書では挿絵を通り越してビジュアルノベルみたいなページ構成になってます。よく翻訳したなあとか組版どうやったんだろうとかそういうところも気になりますが、普通にやった方がわかりやすかったんじゃねと、思わなくもない(^^;

著者ジェフ・ヴァンダミアは「全滅領域」三部作というのが邦訳されていて、これは映画にもなってますね。著者の傾向に従って本書内容もファンタジーあるいは軽めな(?)サイエンスフィクションにウエイトを置いたような方向ですが、他のジャンル例えば現代文学志向なんかでも得られるところはあるかもです。「氷と炎の玉座(というよりゲースロのほうが通りがいいか)」なジョージ・R・R・マーティンはじめ大勢の現代作家、今が旬の作家陣が何人も寄稿していてその点でも貴重でしょう。

とはいえ、明らかに現代アメリカの書き手志望にむけて作られた本なので、日本の読者がこれを読んでそのまま糧になるかといえば、そこは疑問かもしれません。これは権利問題もあるのでしょうが、本文中に提示あるいは引用されるいくつものタイトルが邦訳されているかどうかは明記されていませんし、著者自身が解説している自作「フィンチ」も現在はまだ邦訳は出ていないようです。また本文は文章とイラストが飛び交うビジュアル重視な内容ですが、その途中にかなりボリュームあるコラムが挿入されたりと、決して読みやすい構成とは言いかねるところがあり。

相当ケレン味に溢れた内容なのですが、外連というのは外れるべき連なりがあって始めて機能するものです。思うにこれは


大学の創作講座やライティングスクールのシステムがガッチリ決まったアメリカの創作志望者に向けてのケレン味であって、立ち位置が異なる日本の書き手では若干齟齬をきたすかもしれない。しかしながら同種の既存の書籍(日本のね)とは全く異なるアプローチなので、なにか得られるものもあろうかと。単純によみものとして見ても面白い一冊ではあります。

引用されている古典美術的なイラストの多くが実は現代に描かれたものであって、そこはちょっと面白かったな。アメリカにはまだそういう需要があるのだろうか?