- 作者: チャールズ・ポーティス,漆原敦子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/02/05
- メディア: ペーパーバック
- クリック: 14回
- この商品を含むブログ (21件) を見る
時代小説つーか西部劇、ウエスタン小説ですけれど、ウエスタンとチャンバラは昔から親和性が高いのよ。「七人の侍」と「荒野の七人」とかね。
原著刊行は1968年と結構な年代物で、翌年に「勇気ある追跡」の題で映画化されジョン・ウェインにアカデミーを取らせたもの。映画タイトルで邦訳もあったものを、あらためて2011年に原題通り「トゥルー・グリッド(真実の勇気)」のタイトルで再映画化された(主演はジェフ・ブリッジス)際に新訳を起こしたのが本書となります。
十四歳の少女が父親の敵を捕らえるためにベテランの保安官を雇って追跡行、というストーリーが面白そうで2011年の映画はちょっと興味があったんだけど、結局見に行かなかったんだよね。たまたま図書館で見かけて読んでみたらなかなか面白かったので当時見なかったのをちょっと後悔。とはいえウェスタンってハードル高いよな、やっぱり*1
主人公、十四歳の少女マッティ・ロスのキャラクターが実にハードボイルドで好感が持てます。冷静なビジネスパーソンであり同時に復讐者でもあり。そしていかにも古強者でイイ具合に南北戦争帰還兵(当然南軍である)の連邦保安官補コグバーンと、それよりは若くて伊達者気味でもあるテキサス・レンジャースのラブーフ三人それぞれの人物造型はある意味ベタなんだけど、だがそれがいい。のだろうな。シンプルな展開ながら急展開のアクションあり、なによりマッティの回想として描かれる文体やまなざしが楽しめました。
勿論執筆された当時の出版事情や読者の嗜好もあるのだろうけれど、悪党連中が大体に於いて紳士的なのは面白かった。十四歳の女の子が悪者に捕まって、生命の心配こそすれ貞操の危機はまったく訪れないのね。折に触れて聖書からの一節が引用されることも含めて、これは古き良きアメリカではなくてもっとこう美化された過去、やっぱりこれも偽物のノスタルジアの産物なのかな?*2それも含めて安心して読める活劇でした。
余談。
「アーカンソー州が嫌いな人なんか、地獄に堕ちれば良いのよ!」わたしは言った。
そりゃ大変だ、地獄が満員になって死者が溢れ出すぞ。なるほど現代アメリカのゾンビブームの原因は、こんなところにあったのでした。