- 作者: 小鷹信光
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/11
- メディア: 単行本
- クリック: 10回
- この商品を含むブログ (25件) を見る
ハードボイルド探偵小説翻訳界の第一人者によるエッセイ・研究書。500ページ超の内容のうち三分の二は戦後から現代に至るまでの「ハードボイルド」の変遷を記録したもの、とは言える。軍隊文庫*1が古書店で出回るスタートラインはSF小説とあんまり変わりが無い。日本の出版、映画業界がどのようにこの「固ゆで卵」という言葉を受け入れ紹介してきたかを、自伝と絡めて記述していく。どこか視点は第三者的にも感じられるのはなぜだろう?
色々な人物、さまざまな雑誌名が全く存じ上げないものである時代から、だんだんと見知ったものに落ち着いていく現代までの流れは面白かった。その流れにあって当初から「見知ったもの」として現れるのがハメットやチャンドラーでそれが「古典」ということか。まあ趣味の問題だろうが。*2
ハードボイルド小説が好きだ、という向きには直撃だろうが、余程のめり込んでいないと持て余すかとも思う。正直自分も少々お腹一杯であるw が、「ハードボイルド」ということばをめぐる「言質」の歴史と思うとこれはちょっと面白い。人物・時代・状況の違いはそれぞれに個別の方向性を示し、それに伴い受け止め方も発信の向きもようするにてんでバラバラなんである。
ハードボイルドとは何か。ハードボイルド小説を書くとはどういうことなのか。解答はすべて個人の内側にあり、ただ街を歩いたり荒野を流離うだけでは何も見つかりはしないのだ。
個人的に本書で一番ヒットした「ハードボイルドをめぐる言質」の例
「酒も飲まずにハードボイルドですか、ケッ」
作家・イラストレーターの桜井一って誰?