ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

甚野尚志「中世ヨーロッパの社会観」

中世ヨーロッパの社会観 (講談社学術文庫)

中世ヨーロッパの社会観 (講談社学術文庫)

友人に紹介されて読む。面白かった。なんでも初版刊行時のタイトルは「隠喩のなかの中世」だったそうで、中世ヨーロッパの社会がどのような物事の捉え方、考え方をしていたのかを投影と象徴によって解説した論文集。冒頭、序章に記されている次の一文、

中世ヨーロッパの人々は、どのように自分たちの社会の全体像を理解していたのだろうか。それは、近代の人間が近代社会を理解する仕方と、どのように違っていたのか。おそらく中世には、中世固有の社会に対する認識のあり方が存在した。そのことを隠喩による社会の把握という点から考えようとするのが本書のねらいである

これで内容の概説は必要十分かと。身分制階層社会を安定化させる思考方法は現代のそれとはまったく異質の物であり、異質でありながら社会としては安定していた。中世ヨーロッパの人々の意識は我々とは違うのだと、そういうことである。当たり前の話なのだけれども中世の人間は現代日本の高校生のようには物事を捉えないのだ。

例としてあげられているのは蜜蜂・建築物・人体・チェスの4つである。個人的にはチェスに関する事項が読んでいて面白かった。本来アジア・イスラム圏のものであったボードゲームキリスト教世界に浸透していく過程で種々の駒は変質し、現在のような状態に落ち着いていく。

永遠は静謐な物で無限は騒々しい物だ。中世に於いては永続性をもって捉えられていたこの類の社会認識は自然科学の発展や王権の独立によって喪われ、拡大する思想は新たな社会を構築する。それは多分「経済」を動力源にするものなんだろうな、などと思った。何処をひっくり返しても行き着く先はそれか。

余談。

中世ヨーロッパではチェスを行うことが即ち王侯貴族の統治教育であったそうだ。では現代社会に生きる者として自分は「ディプロマシー」の義務教育化を主張する!友達増えるよ〜(ニヤソ)