- 作者: チャールズ・ストロス,小阪淳,金子浩
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/12/14
- メディア: 単行本
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「サイバーパンク」なる単語がすっかり廃れてしまったのは、そうでなくとも世の中いろいろサイバー過ぎてパンク寸前、わざわざ大文字でCYBERPUNKなどと強調しなくとも、スラング的にアレとかソレと言えばよい、って状態になったからだと思う。アレだよアレ、IT!
そんな時代のラブクラフト的ホラー小説。主人公はジャック・インもハードワイヤードも無いが、残業後の深夜に電話でたたき起こされたり意味も無いセミナーに無理矢理参加させられたり経理部のバカからPCのメンテナンスを押し付けられたりしなければならない!*1そう、IT時代の地球をも守るのはシステムエンジニアなんである!!まさに正義の土方!!!
こじんまりした政府機関が地味に世界を守ってるってのは実にイギリス的だと思う。そしてまた世界を守る政府機関が特に善行を積んでる訳でもないってのはヨーロッパスタイルだよなあ…とも。高度な数学理論がそれ自体マジカルな概念だという設定で、しばしば数学用語(だと思う)が飛び交うものだが考えてみれば魔術用語なぞ知らなくとも魔術小説は読めるし、知り合いのシステムエンジニアは大抵魔法使いと大差ないんで、あんまり心配することもないです。著者後書きや推薦前書きなど読んでるといろいろ楽しそう。サラリーマン的IT諜報部員の、世界の「向こう側」との冷戦スパイホラー小説なんである。うはwテンコ盛りww
日々ディスプレイに向かい又対人コミュニケーションと戦う全ての人にオススメです。
ちなみに表紙にはヒューゴー賞受賞と書かれているが、受賞したのは採録されている短編「コンクリートジャングル」の方である。ゴルゴンと街角防犯カメラの恐怖!
*1:無能な上司が勝手にオフィスのウインドウズを全部XPに更新しようという、世にも恐ろしい所業にすら対処せねばならない