ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

由良君美 編「イギリス怪談集」

イギリス怪談集 (河出文庫)

イギリス怪談集 (河出文庫)

ずいぶん前に読んだ恐怖小説にひどく印象に残った場面があって、作者もタイトルもすっかり忘れてしまったけれどもあれは何だったろう、読み返したいものだな。などと思っていたら最近になってとあるきっかけでそれがブラム・ストーカーの「判事の家」ではないか…と推察ができ、現在ではこの本に収録されていると知り、読む。

まさしく自分が読みたかったものはブラム・ストーカーの「判事の家」であった。訳こそ違え*1印象通りの場面を久方ぶりに読み返し、満足満足。

いやおっかない場面なんだけどなw なんだろう、絶叫するような怖さでなくぞわぞわ寒気が走るような…TerrorじゃなくてChillだとか、そんな感じ。このアンソロジーも概ねそのような傾向の作品が多く採られていてあーこーゆーのを「英国心霊小説」とか言うのでしたかな?カーナッキとかジョン・サイレンスに連なる要素って有るなーと思いながら…ってブラックウッドは二本も入ってるんで系譜もなにもあったもんじゃないすけど(汗)

「判事の家」以外でひとつ挙げるとしたらマンビー「霧の中での遭遇」とか。善意で現れる幽霊の好意が、翻って人を害し、結果死に至らしめたりするというちょっと毛色の変わった作品です。

版元は品切れ絶版だが収録作のいくつかは他の出版社、他の作品集にも採り上げられているようで、殊更この一冊にこだわらなくとも読めるものは読める。自分の場合は上記のような事情があったんでいろいろ探して、結果図書館で読めたのでまあ良かったかなー。何しろ神保町で見かけたときには


思わず絶叫しそうな値段が付いてて


どんな心霊思想より経済原理の方がその、怖いなと。

*1:どうも以前は新人物往来社のアンソロジー怪奇幻想の文学〈3〉戦慄の創造 (1979年)で読んだらしい