- 作者: 佐藤亜紀
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/12/21
- メディア: 単行本
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いやー、読みやすかったし面白かった。佐藤亜紀の本でこんなにストレートに楽しかったのは「戦争の法」以来かも知れないな*1。純文ってカテゴリーにしちゃったけどホントは違うんだろうな。*2たぶんこれは「時代小説」であらゆる時代小説がそうであるように(あらゆる時代劇がまたそうであるように)描出されるのは現代です。
少し前に「電車男」がブームだった頃、マンガやTVドラマや映画で散々「電車男」の話が採り上げられてたとき、ひとつくらいは「電車男を書いた男」の話はあったのかな?と、だいたいそんな話。事実かどうはどうでもよくて、メタフィクションでもなんでもなく、ただのエンタメとして「電車男を書いた男の話」を当時やってたら面白かったかもなーと、いや別に性別は関係ないのですが。
「ディファレンス・エンジン」のどこが面白かったのか、今さら書いてしまうと蒸気機関とか人工知能とかはどうでもよくて、あの話の楽しいところは第一部だけで十分だと思う。他者に先んじて情報を入手すれば有利な行動が可能だってテーゼは技術革新とは何の関係もない。サイバースペース(笑)とか無くていいんだなってところが面白かったわけで。
じゃあ「情報」ってなんだろうね?学生の頃は「知識」の集積だと捉えてたフシがあるんだけれど、集積ではないわな。「意志決定の手段」だっけな図書館情報学でやったのは。
人間として自分は一次資料たり得ないのだと思わされたときには、精々他人が二次資料にまで手を伸ばす助けになる程度の、ごくぬるいメキシコの温泉みたいに薄いデーターベースに成りたいと思ったことはある。ここを始めた理由、いまでも続けてる理由の半分ぐらいは、実はそれだ。まあでも、
それこそ王妃様が誰ぞを誑かして首が折れちまいそうな首飾りを巻き上げたとでも言い立てれば、皆がそれを信じるでしょうな。もう事実かなんざどうでもいい。足元がどんどん崩れて体が宙に浮いていれば、事実なんてものは今そこにあってももう見えもしなけりゃ確かめられもしない。それよりは囀ることですよ、囀ってさえずってそれで我を忘れられればいいんです。倒れる巨木に巣食ってる鳥が一斉に囀り出すみたいにね。
実にイマドキですやん。オススメ。
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と、ここまでを実は地震の起きる直前に書いてた。何事も無ければあの日の夜には上げていたはずだ。
いまになって思うにまーツイッターやっててよかったなぁと。
「感情はエネルギーです」といったのは天才営業マンQBだけれど、なるほど感情は「情報」ではないなーと、記者が現地入りした今朝の新聞を見て思う。感情は情報ではないけれど、情報ではないエネルギーも重要なことに変わりは無いよね。
その上で「情報」には責任が不可分なんだと、繰り返し放送される記者会見と質疑応答見ながら思う。発信者の責任、受信者の責任、仲介者の責任どこが欠けても情報にはノイズが混じるんだな。
うん、面白いぞこの本は。
*1:http://d.hatena.ne.jp/abogard/20050819#1124629677
*2:正直このブログで「読んだ本を分類して系統立ての手助けにする」スタイルを取ったことを、最近では若干後悔している