- 作者: パット・ファレイ,マーク・スパイサー,大槻敦子
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2011/02/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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豊富な写真や図版とともに狙撃手の歴史を編年的に解説した一冊。主に軍事的な「狙撃兵」についての内容なので政治的暗殺や殺し屋・ゴルゴ13の類は特に触れていないのでその点注意。個人的には18世紀のフレンチ・インディアン戦争やアメリカ独立戦争での記述が大変興味深かった。派手な軍服を着用して密集隊形のまま至近距離で撃ち合う歩兵、マスケット銃兵の戦術が主流であった頃に、前装式ライフル銃(ライフルマスケット銃という用語が使用されている)を装備した選抜射手の部隊がどのように運用されていたか…など。ライフル銃兵の射撃距離で砲兵を制圧できたという記述に驚かされる。民間の狩猟者出身が多かったことから17世紀の段階で既にカモフラージュが重要視されていたり、やはり民間用のライフルが得物だったので銃剣が装着出来ずに白兵戦には弱いとかへーほーといろいろ読みふける(笑)日本だとこの辺の銃器発達ってあまり描かれてないのは江戸時代に停滞してたからだろうか。本書ではリエナクターによる再現写真が多く掲載されていて、欧米ではこの時期の軍事史が広く親しまれていることを伺わせる。あ、リエナクターってのはアレです、ものすごくクオリティ高いコスプレしてバンバン戦争ごっこするダメなオトナの集団でつまり欧米にはダメな人が多いとゆー(w;
突っ込みどころも無くは無くて、第二次大戦の時期にソ連軍が狙撃兵教育に力をいれていたことは確かなんだけど
1939年にロシアがフィンランドに侵攻して「冬戦争」が始まったころには、ソ連軍は推定6万もの狙撃手を戦場に送りこむことができたといわれている。
ってのはまーよくある「狙撃兵師団」を「全員が狙撃兵の師団」だと勘違いしてるアレですな。第1章から3章までを執筆しているパット・ファレイ氏はヒストリカルなひとなのかな?「イェーガー」が実際に「全員が狩猟者の部隊」だった時代の記述には特に遜色を感じないのでその辺むべなるかな…
第4章、現代編はイギリス陸軍出身のマーク・スパイサー氏が執筆し、コソボ紛争の解説などは迫真の内容です。しかしフォークランド紛争でアルゼンチン軍が「アメリカ出身の傭兵を使った」のは初耳なんだけど、よく聞く「重機関銃に狙撃されたんでミラン対戦車ミサイルでブンカーごと爆砕した」話がまったく出て来ないのはなんでなんだろう??
それぞれの時代・戦争ごとに著名な狙撃手、有力な火器についても常時コラムとして詳しく解説され、総じて読みやすく面白いスナイパー本だと思います。エンフィールドNo1ライフルって結構凝った作りなんだなー。
現代では狙撃兵の重要度が増している、と本書は最後にまとめている。二次的な付帯被害、流れ弾や無駄撃ちが少ない狙撃兵は確かに傍から見ている分には称賛を受ける存在だろう。しかし実際にスコープに捉えられる側からすれば、いまも昔も狙撃兵は憎悪を先鋭化させるのだろうな、とも思う。