ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

安彦良和「機動戦士ガンダム THE ORIGIN 23」

ガンダムジオングが相討ちになった所で始まる「めぐりあい宇宙」編。アムロもシャアもモビルスーツを喪い直接対峙する様はまさしく な ぐ り あ い 宇 宙 。いやア=バオア=クー内部でもキシリア派とアルテイシア派のMSがボコスカ殴り合ってるんだけどな。なんでガンダムシリーズの宇宙要塞は直径数十メートルのトンネルが縦横無尽にくりぬかれているのであろうか、防御上の見地からは明らかな欠陥構造であり云々。

と、いう冗談はさておいてTVシリーズ最終話「脱出」のほぼBパートに相当する部分を単行本一巻にあたる分量にブラッシュアップしているだけに描写の一つ一つは濃くなっている。具体的に言うとシャアとアムロのフェンシング合戦のシーンがウェイトを増したように思う。もう何度も何度も繰り返し見てきた「ヘルメットが無ければ即死だった」の台詞が、シャア・アズナブルがたかだかひとりの少年兵に完敗したという意味合いなのだと、今更ながらに気づかされる。すなわちそれは「赤い彗星」の死であって、そこから先はキャスバル=レム=ダイクンの生であると、そんな印象。安彦氏の作画は訓練のないアムロの剣さばきをひどく下手くそな、素人じみたアクションで描いてるんでプロの兵士としてのシャアとの対比的な演出、漫画家としてのワザは流石だ。

ララァはボクのママでした(大意)」の、あの「逆襲のシャア」の恥ずかしい台詞をここに持ってきてしまうのはゼータもその後もなく安彦良和コミック版「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN」はここで完結だという意思表示だろうか。ENDはEND、それでいいのだ。

途中過去編をはさんで露骨な延命策には正直辟易したものだけれど、終わってみれば「ガンダムA」創刊十周年号連載第百回で完結したのは綺麗な形だったかもしれません。お疲れさまでした。完結したらまとめて売っぱらっちまおうなどとも考えていたのだけれど、これはこれで本棚を占めていてもいいかもしれないな。


でもやっぱりアニメ化にはあんまりいい気持がしないんだよね。シェークスピアの戯曲を誰の演出でどんな役者が演じても、ハムレットハムレットなんだけどさ。