ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

グレアム・グリーン「おとなしいアメリカ人」

おとなしいアメリカ人  ハヤカワepi文庫

おとなしいアメリカ人 ハヤカワepi文庫

古書店で入手。マイケル・ケイン主演映画「愛の落日」の帯が巻いてあってビビる。そんなのやってたのかー。

いわゆるインドシナ紛争の時代のヴェトナムを舞台にイギリス人特派員の目を通して描くひとりのアメリカ人との奇妙な友情、恋愛をめぐる軋轢と謎めいた死、その解明。筋を追えばそんなところか。主人公ファウラーの造形には著者本人の経歴が色濃く反映されているようで、リアルタイムの発表当時はグレアム・グリーン「が」アメリカのヴェトナム政策に批判を浴びせた作品であるとして多方面で紛糾したようだけれど、ヴェトナムから遠く離れた今となっては「ヒューマン・ファクター」と同じく純粋で理想主義的且つ愚かな若者と、様々なものを裏切って生きてきた疲れた中年男との対比・対話のようでもあり。

出版当時の状況は訳者あとがきや解説にも若干触れられていてそれは面白いのですが、やはり同時代性を共有しないと隔絶感のほうが大きいのは「宇宙の戦士」の文庫版あとがきに近いものを感じたりだ。

しかしボー・グエン・ザップって長生きしましたねえ……