ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

A・ロイド「危うし空挺部隊」

危うし空挺部隊 (文庫版航空戦史シリーズ (56))

危うし空挺部隊 (文庫版航空戦史シリーズ (56))

なんでも今日は世界初のパラシュート降下記念日だそうだけど、「空挺部隊」といってもパラトルーパーではなくグライダー部隊のお話し(イギリス軍のね)

ナチスドイツの初期電撃戦、特にオランダのエバン・エマール要塞攻略戦に猛威をふるったドイツ軍空挺部隊に範を取り、雑多な寄せ集めから始まったイギリス軍のグライダー部隊が激選に投入される度にだんだんと規模を増してノルマンディー上陸作戦など連合軍の大陸反抗には大きな役割を果たしましてとまあだいたいそんな感じの本です。失敗に終わったマーケット・ガーデン作戦の他ライン渡河の際に行われたバーシティ作戦についても記述があるのは良かったけれど、まあなんだろう古い本だしねえ、訳はかたいしそもそもの内容が断片的な証言の羅列みたいになってるんであまり読みやすくはないか。ソノラマの航空戦史シリーズってぎこちない文章のものが多いよなあ…

タイトルに「危うし」とあるようにグライダー部隊の作戦はいつでも大ピンチって感じですね。よく航空母艦への着艦を「制御された墜落」なんて呼ぶけれど、グライダーの着陸は上手く行っても不時着事故で、空母と違って降り立つところは敵地である。数字は載ってませんけれどまー損耗率高そうですよこれ。ドイツ軍がクレタ島攻略後は大規模降下やらずに空挺部隊を単なる「よくできた歩兵部隊」として扱ったのも、そうそう無駄な損耗ではなかったんだろうなあ。連合軍って顔色変えずに人間を死地に送り込む*1ようなところがあるけれど、これもその類か。

全体としては散漫な印象を受けるけれど、個々のエピソードには光るものも見られます。グライダーのパイロットはパラシュート母機のそれとは違って自身も地上戦闘に参加しなければならないって話は、目からウロコ。

現在でも各国軍隊はパラシュート部隊を保持している(サウジアラビア軍まで持ってる)けれど、さすがにグライダー空挺部隊は第二次大戦後急速に姿を消しました。しかし絵的には面白いんで漫画やアニメでは多少見かける気がします。有名なのは「風の谷のナウシカ」に出てきたパージだけれど、近藤和久ガンダムマンガでもグライダーにモビルスーツ乗っけて空挺運用する話があったなあ…


確かこれで読めるはず。オリジナルMS“ジャギュア”“ブレッダ”のほかサザビーやらドワッジなどの重MSをグライダーで運ぶって冷静に考えるとキチガイじみた話なんだけど、かっこいいから問題ないよね!

*1:例えば日本軍の特攻で死んだパイロットよりも連合軍の通常爆撃飛行で撃墜死した搭乗員の方がケタ違いに多い