ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ラリイ・ニーヴン「無常の月」

 同題の短編集はハヤカワ文庫SFの327にもあるけれど、そんなこと知らなくても生きて行けます。というわけで本書は2018年に刊行されたベスト盤もとい版。ハードSFの大家として著名だけれどこれまで読んだことなかったよなーと思って手に取ってみたけれど、それはちょっと思い違いで十代のころにジェフリー・パーネルと共作とはいえ「降伏の儀式」を読んでいた。

…たぶん十代の頃に「降伏の儀式」を読んだからその後は全然手を出さなかったんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか(笑)

有名なリングワールドシリーズ(というかノウンスペースシリーズか)も3本収録されていて、「パペッティア人」とか「ゼネラル・プロダクツ製の船殻」とか、これまで単語でしか知らなかったものをちゃんと読めたのは純粋に嬉しい。特に後者は<あっちの>ゼネプロでまず知ったクチだから、考えてみれば随分と遠回りである…。このなかでは「太陽系辺境空域」の登場人物シグムンド・アウスファラーが非常に面白かった。「中性子星」にちょっとだけ出て来た時は単なる小役人じみた人物だったのにまあすごい。「太陽系―」では「降伏の儀式」のスペースシャトルアトランティスにも通じる重武装宇宙船を所有し、まあその他重度の武器マニアである。良いなぁ…。

表題作「無常の月」は天文学的に破滅する地球と最後の瞬間を過ごす男女を描いたもので、こういうの80年代の18禁マンガとかでよく見たような気がしますw まあいろいろそういうものの原点なのかも知れないね。映画化企画が進んでるようだけど、これ2時間ほどの映像にしちゃったら単なるディザスター・ムービーにしかならんのじゃあるまいか。短篇ならではの叙情だと思うのよねこういうのはね。

その他ファンタジ―作品が2つ収録されているのだけれど、「終末も遠くない」はこれ明らかに読んだことがある。しかしどこで読んだか思い出せない。これまでにウォーロックシリーズの短編集などいくつか邦訳されているようなんだけれど、どれも未読のものばかりでハテ…。S-Fマガジンで再録とかやってたっけ???

ハードSFというのは設定に比べてキャラの魅力があまり無いような偏見が(やや)あるんだけれど、そんなのは思い違いでむしろキャラクターが面白かった。そういう1冊でした。