2021年版*1に引き続きというか遡ってか、こっちも読んでみる。シリーズ開始ということで意気込みは強く感じられ、あとがきにゴシップめいた話を書いちゃうところとか鼻白むところも無くはない(笑)2冊読んで気がついたけどマンガは収録されないのですね。
収録作で面白かったのは日本在住の中国作家が中国語で書き、それを日本語訳したのが初出となった陸秋槎の「色のない緑」と、空木春宵「地獄を縫い取る」の2本か。どちらもAIやVRが現実の人間社会や人間の認識を侵食していくような話で、最近毎日TLに「AIの描いた絵」が流れてくるようなタイミングで読めて面白かった。どちらもメインキャラクターが女性だけで構成され、女性同士の関係性が強調されるいわゆる「百合SF」なんだけど(特に前者は初出が百合SFアンソロなんだけど)、女性同士の関係を全部「百合」でひっくるめるのは乱暴だろうなとも思う。最近は「シスターフッド」なんて言葉もあるけれど果たしてその、カテゴライズする必要って本当にあるんだろうか?人は人であり、人は人に過ぎない。最近「リコリス・リコイル」を百合アニメだと思ってたらおっさんずラブ見せられたから少し身構えてるのかも知れない。かくも読書体験はその時その場の周辺環境に容易に影響される訳である。俺は何を言ってるのだ。後者は、実は結構な暴力性を提示したエログロな話なんだけれど、一人称の視点が入れ替わったり「ジェーン」という名の人物の記述が実在のそれとVR上の仮想人格とで入れ替わったり文体が面白い。冒頭「あなたは」で始まる文章があって、おお二人称じゃん!とかテンションが上がる。ここでは二人称は呼びかけというか「読者への挑戦」なんだろうなあ。本格ミステリーのあれではなくて、作中で記述されるインモラルに対して読者の反応を煽ってるような、そういう挑戦。
飛浩隆「鎮子」はこれ別作品のスピンオフ的な物なんだそうで元ネタをよく知らないんですが、ひとりの人間の行動と内心の想像で綴られる別世界との、やっぱり文体の、これは漢字の開きとか差異が面白かった。高山羽根子「あざらしが丘」片瀬二郎「ミサイルマン」はどちらも状況の無茶苦茶さが楽しい。
だいたいそんなところで。