ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

池澤春菜「SFのSは、ステキのS+」

池澤春菜の中にはヒトが入っている。それは池澤春菜という名前で、池澤春菜をやっている。これはきっとそういう本だ。前作より6年、初出は書いてないけど連載51回から100回までになるのかな?前作の感想はこちらにいちおう。

小説を巡るエッセイというよりは、もっと広くSF全体に関与する…を通り越して、自分自身の在り方、思いをひとつひとつ積みかさねていくような原稿になっています。数年前に記されたことが、いま現在の当人の行動指針のバックボーンになっていることがよくわかる。終始一貫して変わらないうーん、なんだろうなあアイデンティティの発露か。たぶんそういうことなんでしょうね。そしてまた当人の生活環境と、そこに直接関わる世界の様相が激変した(する)時期に書かれたものなので、かなりダイナミックな内容ともなっています。チリの暴動やパピーズ騒動はこの連載で取り上げられなかったら、果たして自分の世界に現れていただろうか?日本SF作家クラブに対して、自分が今持っているような感覚を、持ち得ていただろうか?あらためて単行本を読み直して、そんなことを考えました。

巻末の「歴代会長陣との座談会」は和気藹々と振り返って見る流れだけれど、これ実際にコトが起きてた当時は大変だったんだろうなあ。「会計が個人でSF作家クラブ名義の口座を作って預かり金としていた時代もありました(大意)」って大学のシミュレーションゲーム研究会じゃないんだから(汗)

そして小説「糸は赤い、糸は白い」であります。本物のキノコ好きによる本物のキノコSF小説おまけに女子中学生ガチ!百合!!作品。ゴロゴロ昼寝しながら「そうだ!ウィキからキノコの名前をただただ書き並べればそれで小説になるんじゃね(ピコーン)」などと考えた馬鹿の小説とはひと味もふた味も1000光年ぐらい違うね!!ちなみにその馬鹿が考えた小説というのはこちらになります( ˘ω˘ )

 

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「さなコン2」に書こうと思ったのは、4月に開催されたSFカーニバルに参加して、そこで「柿村イサナ」先生にお会いして昨年のさなコン作品「セルロイドセルロイド、歌え」の感想を伝えた時なんだけど、やはりどの作品も実に「らしいなあ」と思うのです。アタカマ砂漠パロマ天文台の話も、今回掲載分でちらっと出てくるのね。

ああ、だからそうか。今後本書で語られたことの先にある何かが、新しい業績として生まれてくることもあるんでしょうね。「作家は予言者である必要なはい」なんて「2084年のSF」前書きになったものね。

最後に、1枚好きな絵を挙げるとしたら

 

やっぱり13pのやつですね( ˘ω˘ )

 

ああ、「SFジュヴナイル叢書」っていいですね!実現されたい。