ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

古橋秀之「百万光年のちょっと先」

もとは徳間の「SF Japan」誌に掲載された作品を集英社から単行本化されたもの。先日「四つのリング」を再読してやはり面白くて、まとめてよんでみようと。ちなみに「四つのリング」は単行本化の際に描き下ろしで加えられたエピソードなのね。自動家政婦が坊ちゃんに向けた寝物語に語るお話という体裁の全50編。どれも柔らかい語り口で、基本はほっこりするエンドが多くて読んでいて楽しいものです。SFというのもいろいろだけれど、古典SFの匂いがするものが多いしスペースオペラと言ってしまってもいいでしょう。ちゃんと数えた訳ではないけど1本概ね5000字前後の掌編ですが(連載時は複数作品掲載だったんだろうか?)、どれもSFならではなワンアイデアを巧みに料理していて読ませるものです。稀にときどき強力な疑似おねショタが感じられるのも良い。キャラクターもほぼすべてが固有の名前を持たない人物だけれど、それでも人好きのするキャラ造詣がなされていて面白いなあ。それになにより

百万光年のちょっと先、今よりほんの三秒むかし。

の共通書き出し(語り出し)から始まる物語群はなんだかさなコンみたいで楽しいですね。さなコンやる前に読んでたらよかったかもなあ。童話のような雰囲気で、寓話のようなSFを、小さな作品でもスケールは大きく、そして絶妙にホラ話ぽく語る。うん、いいなあこれ。どれも楽しいけれど「四次元竜と鍛冶屋の弟子」「卵を割らなきゃオムレツは」「絵と歌と、動かぬ巨人」「夢見るものを、夢見るもの」「つまり、すべてはなんなのか」なんか特にいいですねぇ……

あれね、キャンディーやらチョコレートやらいろんな種類のお菓子が袋詰めされたバラエティパック。あれのSF小説版だねこれ。