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ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

「フューリー」見てきました。

公式。

感想は映画の結末までの内容を含みます。
ネタバレ:

ブラピ死にます

そういう話だ。タイトルにもなってる「FURY」というのは憤怒とか激怒とか激おこぷんぷん丸とかそういう意味なんだけど、主人公たちクルーが乗り込むシャーマン戦車の愛称であると同時にブラッド・ピット演じる“ウォーダディー”ことコリアー軍曹もずっと何かに怒っている。ドイツ軍というかナチス、特にSS(武装親衛隊)に対する憎しみが激しくてこれは何か因縁があるのか、話の途中で個人的な事情をウザ語り始めるんじゃないかと身構えていたけどそういうエピソードは一切無かった。それが非常によかったですね。よくみていると(たぶんこういうことなんじゃないかな・・・)と推測は出来ますけれども。

デーヴ・グロスマンの「戦争における『人殺し』の心理学」にあった、人は(兵士は)どんなときにどんな動機で引き金を引くのか、あるいはどういう状況下であれば殺人を躊躇し行為は忌避されるのかというのを映像で見せられたような、そんな気分にはなった。この本ってアメリカではどんな位置付けでどれぐらいの人に読まれてるんだろうね?映画スタッフは退役軍人へのインタビューも行ったそうだけれど。

戦争における「人殺し」の心理学 (ちくま学芸文庫)

戦争における「人殺し」の心理学 (ちくま学芸文庫)

そう、思いのほか人間ドラマメインで、ヒューマニズムに溢れた作品でした。こういうものに対してヒューマニズムって言うと「お前は人間をなんだと思っているのだ」などとお叱りを受けそうな気もしますが、やっぱりこれはヒューマニズムの映画でしょうよとそう思う。現実の中東で戦乱が続いてるさなかに、過去の歴史を題材にした戦争映画で兵士にやたらと聖書を引用させるような、十字路の真ん中で戦車が朽ち果ててりゃイエス・キリストのつもりですかいとか、そんなとこもふくめて実にヒューマニズムである。

戦車とか戦車とか戦車とか戦車とかについては現在好評発売中のアーマーモデリング読むといいよ?

フューリー号以外にもいろいろ載ってて「副読本」的なよさが。「タイガー1はいつもケツを掘られるなあ」とか「丸太はあったほうがいいなあ」とか、戦車以外にも冒頭のキャンプ地シーンなどでは米軍の支援車両がいろいろ出てくるので米軍スキーには良い作品です。ミラーモデルのD7ブルドーザーが出たら○○をゴロゴロしてるディオラマを誰か作ろうず!ドイツ軍車両はわりと淡白だったかな。タイガー以外はシルエットのみとか多かったものな。ところでSSばかりで国防軍が一人も出てこなかった(ように思える)のはなんでだろうな。

ツッコミどころもいろいろありますけれどねー。300人スパルタ兵士のみなさん(違)はあんな山ほどパンツァーファウスト抱えて行軍してたのに、いざ戦闘となったら後方からコンテナ持ってきてしかも打ち込むのは1〜2発ってやっぱあの時期のドイツ兵は訓練が足りないのだろうか。そういえばヒトラーユーゲントの子供兵士もたくさん出て来たなあ。戦車道みたいな女の子もいたな。

なにがいいってラストシーンで救出されたノーマンが、「お前は英雄だぜ」とかいわれて救急車に放り込まれると窓は泥だらけで外の様子がまったく見えない、隔絶された戦車の中から出て来たのに、周囲の他の兵士に溶け込むことなくまた隔絶される流れ、でしょうか。「泥」は本作のテーマのひとつだそうですが、登場人物の特に顔のきれい/きたない の差が発言や行動、立ち位置の差と関連付けられているのは面白かったですね。泥に汚れた兵士といえばドイツ版「スターリングラード」で、泥にまみれたキャラたちが皆誰が誰だか区別がつかない無名兵士になっていく姿が印象的でしたが、本作の登場人物はみなキャラ立ちがしっかりしている(あるいは顔の造作が丸顔だったり長かったりヒゲ生えてたりとわかりやすい)ので、むしろ一体感であるとか同志的結合であるとか、そういうところが強調されていたように感じます。

米軍兵士のコートを着ていたドイツ兵が誰かを殺して奪ったのだろうと無慈悲に射殺される一方で、その直後の休憩場面では面白半分にドイツ兵のコートやヘルメットをまとった仲間がいる、戦場で死体を見つけたらまずかっ剥ぐを映画化したのはけっこう画期的じゃあるまいか。ブラピが持ってた自動小銃も死んだドイツ兵から奪ったと思しきStuG44だったしなあ。説明無しに流しているから気がつかないかもしれませんが、かなり皮肉のこもった映像、小道具は画面内に溢れています。これみよがしに車内にぶら下げられたドイツ兵の勲章だって、その多くは「十字架」でキリスト教的意義の深いものだったりするのだよな。

スタッフロールに戦車関連のいろんな役どころがあるのはちょっと面白かった。Tank Driver はホントに戦車を動かしてたスタッフなんだろうなー。で、そのなかにアメリカ海軍潜水艦部隊のなにか名前があったのはどういうわけなんだろ?

アカデミー賞No.1候補!みたいな宣伝文句はさすがにアレですけれど、良い映画でした。シネコンまで行かずに地元の館で見たんだけれど、久し振りに席にカバン置いてトイレに行くとかやっちゃって、映画見るってむかしはこんな感じだったよなーとか懐かしく感じたり(笑)。 次回上映待ちが階段に並ばされているのはまあ、どうかなあとは思いましたが。

<追記>

ツイッターなどでも度々言われているけれど、今回字幕がよかった。使用する砲弾の種類を(卑近な例で申し訳ないが)ガルパンよりも細かく且つ適切にやってて、ほんと戸田奈津子じゃなくてよかったなあと(笑)

・リアリティを徹底追求した『フューリー』、"字幕"をめぐるもうひとつの"バトル"とは!(こんちゃねさん)