- 作者: ジョー・ゴアズ,稲葉明雄
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/09/05
- メディア: 文庫
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「進歩した科学は魔法と変わらない」と言ったのは、あれはアーサー・C・クラークだったろうか。本書「ハメット」はフランシス・コッポラ総指揮映画(日本では1985年公開)の原作小説なのだそうで、映画の方はかろうじてTVCMを見た記憶が残っている。まだ「マルタの鷹」もコンチネンタル・オプもまだ知らない時期のはずなので、考えてみれば不思議な1stインプレッションではある。「スペード&アーチャー探偵事務所」*1のジョー・ゴアズが著した本書がどんな内容かといえば、それは著作権代理人が何気なくもらしたひとこと
「だれか、ダシール・ハメットを主人公にして探偵小説を書いてみたら、どんなものができるだろうかね……」
かくして元ピンカートン探偵社の調査員であり現在は売れない作家であり別居した奥さんと二人の娘がありながらアパートの隣室に住むぽっと出な美人の田舎少女と夜遊びしつつ旧友のもと同僚から市政の腐敗を糾す調査の依頼を頼まれたり旧友が突然死んだり別の旧友“ずんぐりして、小柄な”ピンカートンの探偵が派遣されてきたりでぶの女や怪しい中国人やもぐり酒屋や賭博打ちがたむろする1928年のサン・フランシスコで「デイン家の呪い」や「マルタの鷹」執筆に励む合間にとんでもない悪と対峙するのであった。
いや誰がって、ダシール・ハメットがですよ?
実際丁寧に書かれた作品だとは思います。当時の風俗、ハメット本人の置かれていた状況、アクの強い登場人物etc. でも結局どういう話になるかと言えばつまり「なんてこった、とんでもない悪と出会ってしまった。よ〜しオジサンこのキャラを『マルタの鷹』に登場させちゃうぞ〜」になるのですってオイ(汗)
思うに「進歩したハードボイルドってギャグと変わらない」んじゃなかろうかと、そんな感想を抱いた。日本じゃ一時期ずっとそんな感じだったしなー。
しかし田舎から出てきたばかりのウブな美少女が都会に揉まれて一人前の女になっていく…というのは「幼馴染みはチアリーダー」に次ぐアメリカ人の萌えツボではあるまいかと愚考。いや人種社会階層でいろいろ違うと思いますけどね。