- 作者: ピーター・D.ウォード,Peter Douglas Ward,垂水雄二
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/02
- メディア: 単行本
- クリック: 42回
- この商品を含むブログ (21件) を見る
「絶滅も進化も酸素濃度が決めた」と副題にある。以前、2008年にお台場の科学未来館で開催された「世界最大の翼竜展」でケツァルコアトルスの実物大復元模型を見たとき、果たして中生代の大気ってどんなだったんだろうと疑問に感じて、実はその年のうちにこんな本が出てたんですねえ。いまは文庫にもなってるのかasin:4167651726。恐竜が鳥に進化したことは最早常識以前の定説だけれど、なぜそうなったのかはあんまり話を聞いたことがなかったなーと、そんな気分で手に取ってみました。もっともタイトルは若干釣りで、恐竜の話は後半1/3ほどを占める程度、本文内容はカンブリア期から中生代にかけての大きな流れ、生物の進化と絶滅、多様化と発展のサイクルを地球大気の酸素濃度変化と共に解き明かしていくものです。
地球上に発展する生命はすべからく酸素を取り込むことで活動のエネルギーを得る(そうでない生命も勿論存在しますが、それは極めて限られた空間に棲息する数少ない例です)、ために大気中の酸素濃度が減少すれば絶滅の危機に襲われ、激変した生存環境に適応して発展した生物が、次代の発展を担う。大まかに言えばそういう内容。さまざまな生物の「呼吸」のためのシステム変化が、様々な形態・生態への進化を促していく記述はスリリングで、読んでいて非常に興奮を覚える。仮説としては大胆なものだけれども、その前提となる資料は「ゲオカーブサーフ」と呼ばれる「過去の酸素及び二酸化炭素の濃度変化に関する信頼すべきデータ」である、と。読んでる方にさっぱり知識がないのでアレですけれど、実際この数値変化に大規模絶滅の相関関係を当てはめていけば、生物の進化にこれまで与えられなかった新しい光明を付与することが出来るのですな。
おもしろいぞこれ。
同じ条件下ならエネルギーを多く手に入れた者が支配的地位を手に入れる、考えてみれば進化を止めて文明を発達させている生物も、やってることは同じですね。いずれは地球環境が現有の生物と生物系を滅ぼしてくれるのでしょうねえ(うっとり)
恐竜の本と思って読んだけれども一番の収穫は鳥類の呼吸器系について、その高い能力を学べたことかもしれません。考えてみれば人間が酸素マスクを付けて漸く登れるヒマラヤの山塊を、苦もなく飛び越えていけるのは鳥類ぐらいのものなのだよな。適時挿入される図版とイラストが理解の手助けとなってくれるんだけど、これは日本版のオリジナルだそうで素晴らしい構成です。
しっかし恐竜が鳥に進化したことは最早常識以前の定説とはいえ、漫然と電線に並んででーぽっぽ言ってたり生ゴミあさってカーカーわめいてる連中が恐竜の子孫だって話にはどうもいまひとつノリきれない思いはある(笑)