ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

柞刈湯葉「横浜駅SF」

 

横浜駅SF (カドカワBOOKS)

横浜駅SF (カドカワBOOKS)

 

 WEB投稿小説サイト「カクヨム」からの出版作品第一号ということでやや身構えて読んだ(何故)のですが、しごく真っ当に面白い小説でした。「BLAME!」のパロディというかオマージュ的な要素が根幹にはあるのだけれど、普通に読みやすい内容、親しみやすい小道具、章ごとに新たな人物や展開が提示されるローリング感、まとまりの良さ。しいて言えばJR北海道のユキエさんが最後まで正体不明だったことと、デビュー作でこれだけまとまりのいい作品書くと後が大変じゃないかしらとゆーいらんお節介ぐらいか。

 

主人公のヒロトががただ流されているだけの存在で、そのことに対して自覚的なところが良かった。異世界転生無双とかよりはこういう話の方がいいなあ。

 

その上でもう一人の主人公(というかデウスエクスマキナ的な)であるJR福岡のトシルくんが好き。このふたりが一瞬だけ邂逅して、その後も特に人生で交わったりしないドライな感覚は好きです。

 

弐瓶勉のパロディというのは作者あとがきにも書かれているけれど、パロディというかフォロワーなんじゃないだろうか。アフタヌーン四季賞受賞作にありそうなお話ではあります。