ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ニール・ゲイマン「墓場の少年」

 ニール・ゲイマンを読むのもなんだか久しぶりだけど、やっぱりこのひとは面白いな。謎の人物に家族を惨殺されひとり墓場に逃げ延びた赤ん坊が、その墓場の中で幽霊たちに育てられて成長し、友情を結んだり知識を得たり、傷ついたり悲しんだりしながらも、やがて外の世界へと旅立っていくビルドゥングス・ロマンというかなんというか。かなり変化急なダークファンタジ―のようでいて、直球な児童文学であるように思う。墓場を舞台にしたファンタジー小説といえばピーター・S・ビークルの「心地よく秘密めいたところ」(http://abogard.hatenadiary.jp/entry/20051015/1129391168)がすぐに浮かびますが、これもまた、傑作で。

この作者は人外のもの、ひとならざる怪異や超自然的な存在の描き方が非常に巧みで、今回も墓場の奥底、墳丘の中に眠る守護者スリーアや、主人公のボッドことノーバディ・オーエンズの後見人となるサイラスとその仲間ミス・ルベスク(おそらく吸血鬼と人狼)の描かれ方は大変印象に残る。魔女のライザやボッド自身も非常に魅力的だけれど、とりわけ「敵」であるところの「ジャック」と呼ばれる男たち、有史以来連綿と受け継がれてきた、ただの人間たちによる秘密組織(結社?)の得体の知れなさには唸らせられるもので、なにしろただの人間の集まりで何かするわけでもないのだけれど、ともかくも不気味な集団ではある。

たぶん敢えて説明をしないところが、物語の内容を深めてそしてキャラクターの魅力を高めているんだと思います。日本でも時折こういう書き方をするひとはいますね。でも、それはよほど上手くやらないと単なる説明不足に陥りかねないので、やはりこういうスタイルできちんとお話をまとめられる人はすごいのだなあ…

コララインとボタンの魔女」は映画になったけれど、こちらもどうでしょうか?

そうね、普通ならボッドとガールフレンド(?)のスカーレットがいい仲になって終わりそうなものだけれど、そうはならないところがまた、いいんだろうなぁ…