ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

山田正紀「戦争獣戦争」

戦争獣戦争 (創元日本SF叢書)

戦争獣戦争 (創元日本SF叢書)

 

日本SF界の大御所を久しぶりに読んだ一冊。なんだけど、なんだけどな…

 

1994年、北朝鮮寧辺の核燃料保有施設を訪れた、国際原子力機関の核特別査察官である蒔野亮子は、使用済み核燃料の沈むプールの中で謎めいた生物が泳ぐ様を目撃する――それは戦争によって文明という負のエントロピーを正のエントロピーに“精算"する際に誕生する四次元生命体〈戦争獣〉。生態系ならぬ死態系に潜む死命(シノチ)の最優勢種である彼等は、永遠の闘争を生きる種族「異人(ホカヒビト)」のみが扱える。奔放な想像力が生み出す本格SFの新たな傑作!

 

amazonのストーリー紹介にはこうあるけれど、これではなんだかさっぱりワカラン。人類と戦争という壮大なテーマを独特な視点で描くという点で力作ではあるし、カバーにある

 

デビュー時の言葉「想像できないことを想像する」を体現せしめた書き下ろしSF巨編!

 

という惹句もそれは確かにその通りで、よくこんな話を思いつくなあというのは単純に感心するところではある。しかしなんていうかな、いかにも日本SFだなというか「戦後日本SF」だなというか、テーマの割に描写されるモノゴトやヒトビトが矮小というか…ねえ?朝鮮戦争の漢江鉄橋爆破とかベトナム戦争のソンミ村虐殺とか、わかりやすいアイコンに断片的にフォーカスして、且つお話の起点は1945年の8月6日と9日だというのは実に日本的だなァ…とか、思わざるを得ないところで。結局ポエミーな割に観念のパースペクティブ(ってなんだよ)にもあまり解放感というか発展性というか、そういう視点は感じられないしなううううううむ。

 

黄帝・蚩尤・女渦と言った中国の神話伝説に登場する「名前」をもつ存在がいろいろ出てくるけれど、これ中国の人が見たら怒るんじゃなかろうか(´・ω・`)そういう危惧も、無きにしも非ず。

要は「団塊世代の戦争観ってこうなんだろうな」というのを如実に示された気がする訳で。

ああ、機神兵団読み直したいなあ。中公のC★NOVELS版でねー

 

しかし「ムカデに似た節足構造」をもつ存在ならそれは戦争「獣」ではなくて蟲では無いだろうか???