ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

シオドア・スタージョン フリッツ・ライバー他 中村融・編「猫は宇宙で丸くなる」

 アーサー・マッケンに「白魔」という小説がある*1。有名な作品で何度か読んでるのだけれど、感想を残したことは無かったか。かいつまんで言うと「白魔」というのは一人の少女が魔術師たちによって虜にされ仕込まれていく様を、いわば生贄の視点から描いたような(生贄と断言してよいのかは微妙なのだけれど)一本です。ほんでこの猫SFアンソロジーですが、

猫という生き物が如何にして人間を――とりわけ作家と呼ばれる種類の人間を――虜にし仕込んでいるかを、いわば生贄の視点から描いたもの、といえましょうか。日本では神林長平が特に有名ですが、猫という生き物はしばしば作家を虜にし、仕込むものです。もし貴方の身の周りに「私は猫を飼っている」とか「私は猫を愛している」などと言って憚らない人間が居たら、まず目の色を疑うべきである。思うにそれらは猫に飼われたり、猫に愛されている人間なのであって、主客は転倒しているからだ。

まあ、そういう作品が一杯載ってます。オールタイムのベテランから近年の書き手まで様々、既存のアンソロジーや短編集には未収録なものも多く、個人的な既読作品はひとつだけでした。

自分はひとから犬派か猫派とか聞かれたら迷わず恐竜派だと答える程度にはひねくれているので、猫派なひとや犬派な方が読んだらまた違った感想を抱くのだろうとは思いますが、ジェイムズ・H・シュミッツ*2の「チックタックとわたし」、ジェイムズ・ホワイトの「共謀者たち」の2本が良かったですね。猫という生き物の神秘性をあらわすかのように決して綺麗なだけでは無い話も多くて、ジェフリー・D・コイストラ「パフ」のホラーっぽいラストやデニス・ダンヴァーズ「ベンジャミンの治癒」のほろ苦さというのもまた良きかな。それとジョディ・リン・ナイ「宇宙に猫パンチ」(正直この邦題はどうかと思うが)が、イマドキ珍しい牧歌的というか古典的な宇宙SFで、まだアメリカのSF界にこんな作品書く人がいるんだなってのが割とオドロキでした。イマドキ言うても1992年の作品だから30年前なんだけどさw

*1:https://www.amazon.co.jp/dp/B00H6XBIWS/

*2:カバー画で変に有名な「惑星カレスの魔女」の著者