これ初出は「文學界」なのか。ということは純文学として受け止められた作品というわけですね。刊行当時、約1年前にamazonに掲載されたレビューをみると現代日本で自衛隊とロシア軍が戦火を交えることが「不条理劇のようだ」と評されているけれど、1年が過ぎプーチン戦争*1が始まった現在では、本書の内容は地球の向こう側で起きていることの投影であり、現在の我々が暮らしているこの日本と地続きで繋がるものです。
ストーリー、展開についてはまあ、あまりこの言葉は使いたくないけれど「リアル」と呼ぶにふさわしいものでしょう。陸上自衛隊普通科小隊長の目を通じて描かれる、ロシア軍との壮絶な地上戦闘の、その閉塞感、息苦しさ、不快、恐怖などが鮮烈な文章を通じて読者の眼前に展開する。実質二昼夜ほどの時間が、章立ての一切ないスピーディな語りで繋がれていくのは良かった。
そして元自衛官であるという経歴から、やはり会話の端々や通信符牒に見られる「リアル」さが、物語への没入感を誘うのだろうと思う。一見すると映画的というか劇画的*2に思えるかもしれないけれど、やっぱりこれは文字で、活字で作られた世界だからこそ、「リアル」を感じてその先を思う、そういう感慨を得られるのだろうと思う。
一年後この記事を見返したら、自分はどんな気持ちになるだろう?