ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

太田忠司「鬼哭洞事件」

狩野俊介シリーズ30周年の節目に刊行された11年ぶりの新作。いまは創元なんですね。このシリーズも若いころずいぶん入れ込んで読んだものだけれど、いつのまにか遠ざかってしまっていた。調べてみたら「狩野俊介の記念日」までは読んでいたので「百舌姫事件」「翔騎号事件」の2作を押さえれば大丈夫らしい。そうなのか(´・ω・`)

シリーズ初期の作品はいくつか文庫化されてるけれど、徳間ノベルズのみの中期の作品の方が、いまは却って読み難いのかも知れません。ああ、そうか自分が読み始めたのは「狩野俊介の冒険」からで、あれは1993年の初版刊行なんだ。成程あの時期は、そういうものを渇望していたんだなーと、なんとなく感慨に耽る。最後に読んだ「–記念日」が2004年の作品だから、18年ぶり…ということになるのか。

斯様に読者の方は30年経つ訳だけれど本編ではまだ3年ぐらいしか経っていない。これだけ作品の内外で幅が開くといろいろと齟齬を来たしそうなものだけれど、狩野俊介シリーズ特有の「現代世界のようでいて、実は現代ではない世界」という設定、やや大仰でどこか儀式めいた、まるでノスタルジックな演劇のような、「探偵小説のための舞台である異世界」という設定が活発に息づいてくるような気がする。現実離れしている方が、むしろ作品設定としては自然だ。そして推理小説によくある世界設定の過剰な突飛さを売りにするような作品とも違って、ほんの少しだけ(そして多分善良な方向で)現実から離れた物語を安心して読める。

 

俊介くんかわいい(大事)

 

今回もう一人の探偵、いや野上さんじゃなくてな、いわばライバル的な立ち位置でもう一人の探偵キャラが現れて、よくある推理合戦をするかあるいは(黄金パターンなので割愛)かと思いきや、むしろ人生観というかひとの、自分自身の在り方を問われるような(問い詰めるような)キャラとして配されていたのが面白かった。野上さん他周囲の大人たちは強権的で断罪的な「正義」であるところの烏丸孔明のような人間に俊介くんがならないよう、影響されないよう腐心するのだけれど、そうはならない「道」を示すのもまた大人の役割ですというのはやっぱりいいなあ。いささか胡乱な依頼人と怪しげな屋敷、旧家の禍と苦みの残る解決。安心して読める狩野俊介シリーズです。

 

俊介くんかわいい(2度目)

 

しかしロン毛で孔明っていったらやっぱりアレだよな。俺あっちの方は知らないんだけど今回のお話は狩野俊介vsエルメロイII世みたいな側面があるんだろうか。ないんだろうか。どっちなんだ。とはいえむしろ、推理小説によくある怠惰で不真面目で社会性に欠ける仙人みたいなタイプの名探偵に俊介くんが出会ってしまったら、そっちのほうが大ピンチではないだろうか。そういうのも読みたいです(´・ω・`)ノ 

狩野俊介vs折木奉太郎とか。vs関口巽とか。関口君探偵じゃないけど(´・ω・`)

 

いやしかし

 

俊介くんかわいい(3度目)