- 作者: マイクルコーニイ,Michael Coney,大森望
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2016/03/08
- メディア: 文庫
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「雷竜機」にルビを振ってブロントメクとよむ。タイトルになっているのは恐竜のように巨大な農業機械の名前だけれど、実は話の本筋にはあまり関係がない。マイクル・コーニイの「ブロントメク!」はこれまで読んだ2冊「ハローサマー・グッドバイ」*1「パラークシの記憶」*2と同じように、地球ではないある惑星の社会・文化が崩壊し、しかし再生への希望を繋ぐような、そんなお話でした。既読2冊と大きく異なるところは、社会を崩壊させるのが異星特有の生態環境ではなく、巨大な資本主義システムヘザリントン機構であるところか。とはいえヘザリントン機構が植民惑星アルカディアに勢力を伸ばし、そして見捨てるのは特有の生態環境のためであるので、やはり似ているところはあるか。
ヘザリントン機構が惑星開発につかう重機こそがブロントメクなのですが、お話のカギとしては同様に機構に使役される不定形生物アモーフのほうが重要です。ひとの意識を読み、その人にとっての理想的な人物に姿を変えて自己保存をはかる異星生物。でもタイトルに「アモーフ!」とか「○○○○!」なんて書いたらネタバレも良いところだからなあ。
そうね、既読2冊と同じく本書の中核にあるのも切ない恋愛なんだよね。大きな悲劇で終わるところは、ずいぶん違うのだけれども。
恐竜や愛が滅んでも、理想と希望を捨てられないのは、やはり悲劇なのだろうなあ。
そして資本主義は永遠に不滅である。だいたいそんな話。
一度読み終えたのを、もう一度再読して感想を書いている。序盤から丁寧に伏線をちりばめているのがよくわかって良いのだけれど、「一度目は悲劇で二度目は喜劇だ」という言葉が思い起こされてその、困るな。