面白い本を2度読みするのは今に始まったことでもないけれど、図書館の貸し出し期限を生まれて初めて延長してやったのは初めてかも知れない。実に面白かった。スコルジーはいいぞ。
とはいえ。
実はストーリーはそんなに面白くは、ない。SFミステリーではあるけれど、推理というか謎解きの部分が一本的で且つ「便利な友人」によってお話の筋外から唐突に投げ込まれてくる感がある。設定の類も、実はそれほど独創的でもない。身体を動かせない人間がリモート操作するロボットを使って捜査活動というのは、すぐに思いつくのはブルース・ウィリスがそんな映画やってた*1し、なんなら「攻殻機動隊」にいくらでも類似・近似の例を見つけることができるだろう。
ではなにがいいかというと。
脳内に機械的なネットワークを植えつけてロボットをリモートしたり、あるいは他人の意識を「入れ」て代理的に動いたり、それらに伴う非物質的ネットワークコミュケーション社会であるとか、10年20年前ならサイバーパンクのラベルを貼って全力でアピールするようなガジェットが、ことごとく普通の物となっている世界、いまの、現実の人々がスマートフォンやwindowsのアップデートについて語るような感覚で描写される世界をフラットに綴っていて、そこがとても面白かった。
「設定」を語る部分は確かにあるんだけれど、どんだ技術が進歩しても、世の中そうそう変わらないという意味では極めて21世紀的なSF小説なのかも知れないなあ。